第六十四回 本番! それは、これから知りゆくこと。


 僕は君のことを。


 君は僕のことを。


 ――同じ時に巡り合わせて、稀な、本当に稀に巡り合わせた僕たち。



 それが最初から描かれていたシナリオとは……本当に、摩訶不思議。ふと思うそのワードたち、脳内を駆け巡る。……それでも僕はまだ幼くて、難しいことはわからない。


 ただ、何となくだけど、

 潜在的なものから、それらは現れたのだと思う。だから、思ったことを行動する。


 それもまだ、

 全部わかるまでの、氷山の一角にも満たない出来事なのだと思う。――されど今、目の当たりにあることは、決して幻ではなく事実……真実の有様なのだ。


「僕……」


 僕は太郎たろう君の前ではファーストな、僕のことを「僕」って言った。


 その前は、私……だったから、もう! ヘタこいた。……ああっ、太郎君の顔が表情が徐々に、段々だんだんとドン引きに……って、あれ? で、さらに、


「最高だよ、千佳ちか!」


 と、さっきの僕よりも、ぎゅっと僕を抱きしめた。「強い、強すぎだよ、太郎君」と嬉しい悲鳴を上げるほどに。傍らの梨花は、只々キョトンとするばかりで……


 ハッとなり、またしても胸中で……ああっ、と叫ぶ。


 梨花りかのこと、すっかり忘れていた。でもでも、咄嗟に浮かぶこと、それは、


「この子も、僕と同じ『ボクッ娘』なの」――と、僕は言い放った。その視線は、紛れもなく梨花を指す。僕は目で、太郎君に訴えていた。それと同時に思い出したのだ。太郎君はゲームの他に、アニメが好き。その中でも『ボクッ娘キャラ』が好きだったことを。


 もう笑顔満開。このドラッグストアの出入口に咲き誇る。その中に於いて、


星野ほしの梨花です、初めまして。僕は、この子の双子の姉です」――と、威風も堂々と。



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