第六十回 脳内に於いて、想い出は繰り返される。


 ――クルクルと、目まぐるしくスピンする。そのようなイメージだ。



 黄色のNPCノートパソコン、目の当たりにする今現在の画面に於いて……


 どうして?


 どうして今頃……と、誰に対してなのか? 声にならず、声にしたとしても届くことのない、このメールの相手。画面の遥か向こうにいる存在……想い出の糸で繋がれている。


 その人は……

 ううん、『その子は……』だね。僕と同い年の男の子。


 僕がまだ『僕』になる前の、まだ『ボクッ娘』になる前の、まだ『私』だった頃……まだ一人称が『私』だった時に、僅かながらでも付き合っていた男の子。


 このメールに記載されている名前……つまりUT……


 この子だったのだ、UT。つまり『ウルトラ・タロ』の正体。――それも、それもこの子自身が自ら明かした。それが『第一のショック』……僕の予想を覆したのだ。僕はてっきりパパ……ティムさんと、そう思っていた。選抜を勝ち抜き優勝したら、よしよしと頭を撫でて褒めてもらえることを楽しみにしていた。……違う、違っていたのだ。



 この子、……もう名前を明かすね。


 太郎たろう君。……霧島きりしま太郎。それがこの子の名前だ。

 メールにも、そう記載されている。


 千佳子ちかこ――と、僕のことをそう呼ぶ。『千佳』+『子』……この子なりに親しみを込めた僕に対するNNニックネームだ。今でもまだ……そう呼んでくれる。この子は僕を、ゲーマーにした子。僕は今でも……太郎君のことが、好きなのかな?


 でもそれは、


 ――『第二のショック』となる過去も、脳内で連動されてしまう。それでも僕は、まだ太郎君のことが大好きなのか? それは『二〇二〇年夏物語』へと続いてゆきます。

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