第48話

夢の続き


 私は記憶を持たない。

 その私をこの世界に留める楔となったのは…女。

 全ての源は、闇の彼方。

 私は、男の語る過去を信じて行動を共にする。

 女は既に私の師ではなく、共に道を切り開くも者でもない。

 いずれ男の手によって、何処へかと連れ去られる私の体。

 天かける槍は、着々とその仕様を整える。

 

 ある日、男は私を伴って、市街(まち)に出る。

 市街の先にある子供たちの退避壕(シェルター)。

 男はその解放を口にする。

「子は文化を継承する礎だ」

 共同体で子供たちを育てていく仕組みを男は語る。

 「人喰い」のことを男は知っているのか。

しかし、それも古い因習。

砂の原に水の海を満たしたように、古きものを、新しい波で覆う。

男を動かす、強い意志。

零れ落ちた世界の秩序は、大きなうねりに呑み込まれ、新たに再生する。

この世界は、一人の男の力で変わっていく。

それは、偶然の積み重ねか…

それとも機が熟したという必然なのか。

 

 男は子供たちの退避壕から一人の男の子を選び出す。

 直感なのか、無作為なのか。

「この子が、この世界の次代を担う」

 男はその少年を自らの居所へと連れ帰る。

 男は少年に何を見たのだろうか。

 未来か。

 可能性か。

 男は夢の続きを思い描く。


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