第27話

寄宿舎


 やがて、子供たちは一人二人と部屋を後にし始める。

 誰が呼びに来たというわけではない。

 何人かで連れ立って、広間を出て、続き部屋へと消えていく。

 暫くすると、広間に残っているのは私と女、そして、年かさの子供が少しばかりだけになっている。

 子供らは私たちを別室へと誘う。

 誰が用意したのか、そこには簡単な食事が並べられている。

 私たちは、勧められるままに子供らと食事を共にする。

 子供らは、食べながらも相変わらず良く喋る。そして少ない品数ながらもよく食べる。

 食卓のものは、あっという間に平らげられる。

 彼らは、食べ終わると、さっさと後片付けを済ませ、さらに私たちを案内する。

 連れて行かれた先、そこはいくつものベッドが並べられた寝室。

 彼らは空いたベッドに腰を下ろすと、また話し始める。

 もちろん、先に寝室に来ていた者も、まだ一人も寝てはいない。

 私たちも空いたベッドにもぐり込む。

 しかし、もう子供らと話す気力はない。

 床に就くやいなや、私は眠りに落ちていた。


 夜中、私は、ふと、傍らに人の気配を感じ、目覚めた。

 暗がりの中、薄く目を開ける。

明かり取りの窓も何もない部屋の中は、暗闇の淵に沈んでいる。

しかし、暫くすると、少しずつ暗さに目が慣れてくる。

私は、人の気配を感ずる方へ、ゆっくりと視線を泳がせる。

暗がりの中、さらに黒い影が薄ぼんやりと浮かんで見える。

やがて、その黒い影は、しずしずとこちらに近づき、いきなり、ひらりと身を躍らすと、私の上にのしかかろうとする。

 私は、すんでのところで身をかわす。

 飛び掛ってきたもの、その手と思しきところには、暗がりの中でも、一瞬きらりとひらめく何かが握られている。

 影はさらに私めがけて、その怪しくきらめくものを振りかざす。

 それをよけた私の背後で、何かが突き刺さるような鈍い音がする。

 私は、その場を逃れようと、慌てて数歩あとずさり、何かに足を取られてもんどりうつ。

 倒れた脇には、横になっている人…子供。

 その目はすでに見開かれ、倒れた私を見つめて、ニーッと笑う。

そして、時を置かず、私を組し抱こうとする。

私は、その子供に組み付かれたまま起き上がり、また何歩か歩を進める。

すると、足元にするすると手が伸びて…

私は、何人もの子供にとらまえられて、身動きできずに、その場に再び倒れ込む。

そこへ、先ほどの黒い影が躍りかかって…

「やめなさい!」 

 暗がりの中、鋭く響いたのは、制止する女の叫び声だった。



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