第48話 水と油
久しぶりに晴れ間が見えた木曜日の朝。
四性天アリスとほむらは、何故か一緒に登校していた。本来この二人は、同じ四性天であっても余程のことが無い限り行動を共にすることがなかったのだ。
では何故、今この二人が並んで歩いているのか。それは・・・
「聞きました?あの話。」
ほむらと目を合わせずに言うアリス。
「うん・・・聞いた。許せないよね。」
怒り口調のほむら。こんなほむらは珍しい。
二人の言う『あの話』とは、お泊まり勉強会のことだ。ヒメノが話してしまったのだ。別に口止めされていたわけではないのだが、この二人がそれを知ったらどんな反応を示すか位は分かっているだろうに。
「・・・ほむほむも誘ったらマユリお姉さま来てくれるかな。」
ボソッと言ってみたほむら。
「ほむらさん。あなたまで裏切るつもりですか?」
ギロリと睨むアリス。ほむらは戦慄を覚えた。
怖い・・・リスリスってこんな子だった?
アリアリだと何かアレなので、ほむらはアリスのことをリスリスと呼んでいた。
「そ、そういう訳じゃないよ。ただ・・・ほむほむ達も誘ってみない?マユリお姉さまのこと。」
アリスの機嫌を伺いつつ、ほむらは提案してみる。
「そうですわね。ではワタクシの家にご招待しましょう。勿論ほむらさんも参加していただいて構いませんことよ。」
上から目線で鼻につく言い方。ほむらはムッとする。
「何でリスリスの家なのよ!ほむほむの家でもいいでしょ!」
睨み合う二人。ほむらはアリスのお姉さんぶっているところが嫌いだった。確かにほむらは見た目幼女に近い。だがアリスと同じ年だ。世界の妹を目指してるとはいえ、下に見られるのはどうにも我慢できない。
「ほむほむマユリ先輩誘うから!来たければリスリスもどうぞ!」
同じ目的を持っているはずなのに、全然仲良くなれない。所謂この二人は交わることのできない、言わば水と油だった。
その時、ほむらのボディーガードがどこかしらか現れる。
「ほむらお嬢様、ご報告があります。」
「何?後にして。」
アリスと睨み合っていて、他のことは目に入らないほむら。しかし、ボディーガードは話を続ける
「大事なことです。どうやらミカ様がお誕生日会を催すようです。」
「えっお誕生日会?」
アリスは別に興味は無さそうだが、ほむらは驚いて聞き返す。
「楽しそうだね。そっか、ミカミカ誕生日かぁ。ほむほむも参加させてもらおうかな。」
ミカとほむらは仲が悪いわけではない。なので純粋にお祝いしてあげたいと思ったのだ。
「その方がよろしいかと。マユリ様もご参加されるようですし。」
「マユリお姉さまも来るの?」
目を輝かせるほむら。これは是非行かないと。しかしアリスは険しい表情をしている。
何でミカさんの誕生会にマユリ様が?
もしかして・・・
また抜け駆けですの?
・・・あの小娘ぇ~~。
アリスは携帯電話を取り出し、電話をかける。どこにかけているのだろう。
「おはよう、ミカさん。あなた、ワタクシに何か言うことありません?」
ミカに電話したようだ。
そしてツンツンしながらアリスは言う。だが、言われてる方は何のことだかさっぱりだろう。
「だから・・・ええ・・・そうですわ・・・ならワタクシの言いたいことはわかりますわね・・・えっ・・・別にそういうわけではありませんわ・・・まあ・・・ミカさんがそうおっしゃるのなら・・・」
アリスはゆっくり電話を切った。そして、なんとも言えない顔をしている。
「ミカミカと何話したの?」
突然ミカに電話をかけたアリスに驚いていたほむらは、恐る恐る聞いてみた。
「ワタクシ・・・ミカさんの誕生会にお呼ばれしましたわ。」
「ええ~~!」
当然驚くほむら。しかし、アリスは険しい顔を崩さない。何かミカに主導権を握られているようで気分が悪いのだ。だが、参加すればマユリに会える。それがあるから渋々Okしたのであった。
「いいなぁいいなぁ。ほむほむもミカミカにお願いしてみよぉ。」
携帯電話を取り出し早速ミカに電話するほむら。
「やっほーミカミカ。ねえねえ、ミカミカのお誕生日会、ほむほむも行っていい?・・・うん・・・えっ・・・ううっ、わかったよ。でもいいんだよね・・・うん、ありがと。」
電話を切るほむら。何故か浮かない顔をしている。
「どうしたのですか?もしかして・・・断られました?」
ちょっと気の毒そうに声をかけるアリス。
「ん~ん。ほむほむも行けることになったんだけど・・・マユリお姉さまにアプローチしないでって言われた。」
ほむらは悲しそうだ。マユリに会う=口説く。というのが四性天メソッドの1つだ。それを封じられてしまった。
「うわぁぁぁぁ!」
突然吠えるほむら。ビックゥとなるアリス。
暫くの間、目を閉じ、歯を食いしばるほむらだったが、程無くしてアリスに顔を向けた。
「あ~あ・・・スッキリした!よし!ミカミカをいっぱいお祝いしてあげよ!ねっリスリス!」
一気に気持ちを切り替えたらしいほむらはニコニコ笑顔だ。
「えっええ。そうですわね。」
うっかり流されてしまったアリス。まあ仕方ない。今回はミカに花を持たせてあげよう。
立ち止まっていた二人は再び歩き出す。
「プレゼント何あげようかな~♪」
ご機嫌な様子のほむら。そんなほむらを見ていて、アリスも少し楽しみになってきた。
「オーソドックスにアクセサリーなんていいんじゃないかしら。」
まぁ無難な選択だろう。しかし、それではほむらを納得させることはできなかったようだ。
ほむらは爽やかな笑顔で空を見つめ、そしてボソッと言った。
「呪いの人形にしよ。」
ゾワワワワッ!
全身から羽が生えてしまうのではないかというほどに鳥肌が立つアリス。
・・・
・・・
怖いよ!
ほむらの晴れやかな顔が、逆に怖い。本気なのだ。本気で曰く付きの人形を探しだし、渡そうとしてるのだ。当然アリスは引いている。
学校につくまでの間。何とかほむらを説得したアリス。もしかするとミカの命に関わるかもしれないし、その周りの人達にも影響があるかもしれないからだ。本人の知らないところで、アリスはミカの恩人になっていたのだった。
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