24話 感情論の前では合理性などゴミでしかない。


 24話 感情論の前では合理性などゴミでしかない。


「人間は、一度上がってしまった生活レベルを下げることが、なかなかできない。貴様は、それと同じ感覚を味わうだろう。ゴミのようなアイテムしか見つからない絶望をかみしめながら、毎日を積み重ねるしか道はない」



 すべての前提が、センに対して、これでもかと、無限の地獄をつきつけてくる。


 あまりの絶望に、センは、悲惨さ全開で、



「……いったい、あと、何回繰り返せばいい……あと、何度……」



 『答え』を求めて問いかける。


 心がつぶれそう。

 頭が終わりそう。


 センの必死の問いかけに対し、

 ヨグシャドーは、どこまでも、無慈悲に、たんたんと、


「二回や三回では終わらないだろうな。10回でも無理だ。100回でも少ない。これまでの倍となる2000回目に到達したとしても、まあ、厳しいだろうな」


「……」


「残り5分。リミットが近づいているぞ、センエース。飛ぶならはやくしろ。というか、こんなギリギリの中でうだうだ考えず、飛んだ先で悩んだらどうだ? その方が合理的だと私は思うが」


「合理的かどうかなんか……感情論の前では無意味だ」


 と、自分自身を否定するセン。

 センエースは、合理を重視する男だが、

 しかし、彼は、完全無欠の存在ではないので、

 状況次第で視点は変動する。


 センは、両手で髪の毛をかきむしり、


「飛んだら、また、やらないといけない。『やらないといけない』というか、俺はたぶんやる……それが見えているから、踏ん切りがつかないんだよ」


 理屈にすらなっていない無意味な駄々をこねはじめるセン。

 心が躊躇を訴えている。

 必死になって、『動かなくていい理由』を探している。


「いやなんだよ。もう立ちたくないんだよ。もう無理だから。わかっているだろ? もう、いい加減、終わろうじゃないか。思えば長い地獄だった。もう50年近く、この地獄でさまよってきた。戦国時代の視点で言えばもうエンドロールが流れている頃合いだ。これだけ頑張ってきたんだから、もういいだろう。全員、死んだことだし、俺もここで死んで、終わりにしようじゃないか」


 『ここで終わっていい理由』だけを、

 センエースは、必死になって叫ぶ。


「頑張っただろ! 俺、頑張ったよな?! 誰がここまで出来るんだよ! もはや、すでに、やりすぎっていうか、頑張りすぎだろ!」


 溢れ出る。

 こぼれる。


「褒めなくていいよ! 喝采も、賛美もいらない! マジでいらない! だから! どうか、『諦めていい』って許可だけくれ! それ以外は、もう、何も望まないから!! その許可証だけが、今の俺が望む全部なんだよぉぉ!」


 センは、漏れ出る弱音を、吐きだした。


「苦しい! 苦しい! 今日だけじゃねぇ! ずっと苦しかった! もう嫌だ! なんで、俺ばっかり! どうして、俺ばっかりが、こんな苦労をしないといけないんだ! しんどすぎるんだよ、ずっと、ずっと、ずっとぉおお! いい加減にしてくれぇええ!」


 センエースの慟哭を、

 ヨグシャドーは、黙って見届ける。

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