91話 どの美少女よりも完璧なボディを誇るオールドレディ。


 91話 どの美少女よりも完璧なボディを誇るオールドレディ。


「あなたは王なのです。常に、その自覚をもって行動していただかねば困ります」


「好きに困ればいい。いつだって、俺は俺を押し通す。それだけが俺のジャスティス」


「正義とは、相対的な空想。陛下にはふさわしくありません。陛下は、絶対的な王。陛下こそ、純粋な真理」


「……いや、純粋な真理ではないと思う。さすがに」


 普通に困惑して尻込みするセン。


 ゾーヤは、そこらのオールドレディとは格が違う。

 気の狂い方で言えば、

 K5に匹敵する化け物。


 破格の超越者がそろい踏みの300人委員会の中でも、

 最高格の発言力を持つ稀代の超人。


 ――と、そこで、トコが、

 ゾーヤに対し、ウザさ全開の目を向けて、



「というか、帰れや。あんた、いつまでおんねん!」



 と、K5全員が思っていた言葉を、ついに口にする。

 昨夜から、『センを正式に王にするための手続き』云々をほざき散らかしながら、この家に転がり込んできたゾーヤ。

 いまも、なお、パソコン作業はしているようだが、

 しかし、一段落はついているように思えたので、

 トコは、『ぶぶ漬け』を差し出しながら、丁重に、

 ゴーホームを提案してみせた――のだが、


「いつまでも何も、昨日から、私の住所はこの家よ。既に、特別永住者として認められているし、住民票もこの通り」


 見せられた書類を奪いとり、中身を確認するトコ。


「……うわ、このババァ、マジやん……イカれとるな……」


 ボソっとそうつぶやいたトコに、

 ゾーヤは、


「あなたたちだけには言われたくないわね。あと、実年齢と精神年齢は、確かに、あなたたちの数倍だけれど、肉体年齢でいえば、そこまで差はないわよ。というか、完全なる肉体を手に入れた私の方が、肌の艶も髪の質も上だけれどね。ふふん」


 と、上から目線で言い放つ。


「ハラ立つな、このババァ……殺したろか……」


 いらだちを隠そうともしないトコ。

 そんなトコと、優越感をむき出しにして対峙するゾーヤ。


「虚影を持つ私の方が、脆弱な携帯ドラゴンしか持たないあなたよりもはるかに上。私を殺したいと思うのは勝手だけれど、実行に移した場合、容赦なく返り討ちにするから、そのつもりで」


 ついでに殺気もむき出しにしていく。

 そんな彼女に、センが呆れ交じりに、


「いや、あの……トコたちを殺すのだけは、絶対にやめてくれる? いや、マジで」


「ご安心を、陛下。売り言葉に買い言葉で返しただけのこと。弱い者いじめは趣味ではございません。それに、あの根性なしの小娘に、私に立ち向かう度胸などありません」


 などと、センに平伏しつつも、辛辣な言葉でトコを煽っていくゾーヤ。


 ピキっているトコと、

 そんなトコをなだめている紅院。

 ゾーヤに煽られたトコをからかっていく茶柱。

 茶柱に殴り掛かるトコ。


 K5のじゃれあいに対して、

 ゾーヤは、冷めた目を向けるばかり。


 彼女たちに対し、現状のゾーヤは、

 『程度の低い小娘』という感想しか抱いていない。


 基本的にゾーヤは、他者に対して厳しい。

 自分にも厳しいが、他人にはもっと厳しい。

 そうやって、世界と向き合ってきた。

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