85話 ゾーヤが、どうしても聞きたいこと。


 85話 ゾーヤが、どうしても聞きたいこと。


「……あの恐ろしき神々を……鎧に変えて……纏っているのですか……?」


「鎧っていうか、パーツかな。この小手の部分がギで、このバングルみたいなのがヤイで――」


 などと、丁寧に、どうでもいい解説をするセン。

 ハッキリ言って、ゾーヤは、

 センの説明をまったく聞いていなかった。


 詳細など、どうでもよかった。

 ゾーヤにとって、大事なことは一つだけ。



「……どうしても……聞きたい……お聞かせ願いたい……」



 懇願の眼差しで、まっすぐにセンを見据えて、


「どうして……私を……私たちを……守ってくださったのですか……あの神々は、恐ろしかった。とてつもない化け物……あなたも強いが、しかし、あの神々も同じぐらい強大だった……あなたは勝ったが……楽勝ではなかった……一歩間違えれば……やられていたのはあなたの方だった」


 そのぐらいは見ているだけでもわかった。

 もちろん、アウターゴッドとセンの動きは高みにありすぎるので、

 戦闘の詳細や感情の機微を明確にチェックできたわけではない。

 しかし、結果を見るだけでも、

 ボロボロになっているセンの様を見るだけでも、

 『死闘だった』ということは分かる。

 『死ぬ可能性のある鉄火場だった』ということは明白。


 ソレがゾーヤにも伝わるであろうことは、センも理解できているので、

 センは、たんたんと、冷静に、


「そうだな。確かに間違えればやられていただろう。それなりにギリギリだった。アウターゴッドは、さすがに強かった。それぞれが隠し持っていた切り札の覚醒技や必殺技も、なかなかエグかった。対処するのは大変だった。だが、俺は乗り越えた。えっへん」


 鼻を高くして、自分の対応力を自慢するセン。

 まだ、軽くハイになっている。


 そんなセンに対し、

 ゾーヤは、


「私の疑問に、どうか、答えをいただきたい……なぜ、私たちを守ってくださったのですか……命のかかった鉄火場で、狂気の神々という絶望を前にして、どうして……私たちの命を優先することができたのか……」


「優先? おかしなことを言う。自意識過剰も大概にしてくれ」


 あしらうようにそう言ってから、


「俺は、ただ、俺のワガママを執行しただけだ。いつだって、俺はそれだけのガキでしかない。身勝手で自己中でキチ〇イの童貞。それが、俺だ。……酷いな、改めて言葉にすると。たまにニュースで見かける『やべぇ通り魔』みたいな男だ……」


 などと、ファントムトークでかわそうとするセンを、

 ゾーヤは逃がさない。

 彼女は甘くない。

 詰めると決めた時の彼女は、とことんいく。



「あなたがワガママであるという主張は、闘いの途中で聞きました。私が知りたいのはその先。あなたが信条としているワガママの内訳を、お聞かせいただきたい」


 しつこく詰め寄ってくるゾーヤに、

 センは、ウザそうに顔をしかめて、


「なんで、そんなことをお前に教えてやらにゃならんのだ、という気持ちで一杯だが……まあ、いいや。特別に教えてやるよ。耳をかっぽじれ」


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