78話 センエースの狂気は神を超えている。


 78話 センエースの狂気は神を超えている。


 『ヤイとザリガーに集中力を分散させている今のセン』になら、

 『致命の一撃を叩き込める』と確信して、

 間違いなく最善の一手を放つギ。


 ――だけれど、


「教科書通りの攻撃は、読みやすいんだよぉ!」


 最善の一手を放っても、

 最善の結果になるとは限らない。


 ――ギの『完璧にセンをとらえた』と思った拳は、

 気づけば、ふところにもぐりこんでいたセンにからめとられ、


「だぁありゃぁあああっっ!」


 グンッ、と腰を豪速で回転させて、

 ギを地面にたたきつけようとして、

 しかし、


「うらぁっっ!!」


 地面にたたきつけられる寸でのところで、

 ギは、体をねじり上げて、

 センの腕の中から、どうにか逃げのびる。


 そのまま、瞬間移動で距離を取り、

 一息とれる間隔を奪い取る。



「はぁ……はぁ……」



 息を切らして、センを睨みつけているギ。


 そんなギに、センは、


「俺の竜巻背負い投げから逃げるとは、さすがアウターゴッドだな。褒めてつかわす」


「……神である私に対し、下等生物が、上からモノを言うな……」


「あんたらが神であることは認めるよ。あんたはとんでもない高みにいる。けど、俺は、そんなあんたらを超えてしまった。三体同時相手でも、ぶっちゃけ、勝てる。もちろん、余裕ではない。かなりギリギリだ。しかし、俺の強さは、あんたら三体を相手にしても、どうにか出来るところまでたどり着いている」


 ニィと微笑んで、


「自分で自分をほめてやりたい気分だ。どうしようもなくクズいところがたくさんある、カスみたいな俺だが……しかし、いいところも確かにあった。バカみたいに努力できるところ。必死に積み重ねることができるところ」


 トントンと、軽くジャンプしながら、


「俺の狂気は、神を超えていた。その現実を証明する。別に、証明したいと願っていたわけじゃないが、しかし、証明できるのであれば、まあ、証明しておきたいなぁ、と思わなくもない」


 ダラダラと特に有益でもない無意味な言葉を並べてから、

 センはさらに猪突猛進。


 バカな特攻に見えて、

 その実、計算し尽くされた華麗なる神の一手。


 センエースは止まらない。

 濁流のように、津波のように、

 三体のアウターゴッドを飲み込もうとする。


 キレッキレになったセンの集中力が、

 さらに、一段階、深いところにまで届く。


(見える……終局までの全部が見える……)


 まるで、三人称のS・RPGみたいに、

 自分の動きと、相手の動きが、

 全て俯瞰で見えている。



 ――見えすぎていた。



「っ!」


 センの圧力に押され、

 焦ったヤイが、とっさに放った異次元砲。


 その異次元砲は、

 射出角の問題で、

 『センには当たらない』が、

 しかし、そのかわり――というのもおかしな話だが、

 事実として、

 ゾーヤめがけて一直線に伸びていた。


 それを認識したセンは、ブワっと冷や汗を流し、


(あっ、やばっ……ゾーヤ、死ぬ……っっ)


 頭の中が、信じられないほど高速で加速した。

 『その一手はまずい』と理性が叫ぶ。


 ――しかし、気付いた時には、もう、センは飛び出していた。

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