66話 『ギ=ホヴェルグ』の本質。
66話 『ギ=ホヴェルグ』の本質。
「貴様は非常に矮小だ。絶句してしまうぐらい小さい。これまで、私は、こんなにも小さいゴミと肩を並べて、話をしていたのか。なるほど。道理で、時折、話が通じないわけだ。私と貴様らでは、命に格差がありすぎた」
徹底的に調子にのるナバイア。
そんな彼を横目に、
ギが、
「くく……貴様らに差などない。どれも同じ虫けらだ」
その言葉に、ナバイアは普通にムっとする。
しかし、反論はできなかった。
増長はしているが、頭の回転速度が低下したわけではない。
むしろ、思考速度のキレは増している。
だから、
(……これほどの大きさを持つ者の視点で言えば……確かに、私もゾーヤも変わらないかもしれんな……)
ナバイアの目には『ギのすさまじさ』が少しだけ見えていた。
ギは、現在、力を抑えている。
なので、ナバイアの目に『ギの本質』は見えていない。
しかし、それでも『ギがハンパではない』ということだけはわかった。
だから、何も言えない。
『より大きな力を前にすれば委縮するしかない』
という、非常に『人間的な行動』でダンマリを通すナバイア。
と、そこで、ギは、ゾーヤに視線を向けて、
「そこの虫けら。せっかくだから、貴様にもくれてやろう」
そう言って、虚影をもう一本取り出すと、
それを、ゾーヤに差し出すギ。
その光景に対し、
ナバイアは、
「や、やめろ! 選ばれるのは私だけでいい! 私だけで十分だ! 人の中で、最高の力を持つ者は私だけでいいんだ!!」
「貴様ごときが、このギ=ホヴェルグに指図とはおこがましいにもほどがある。少し黙れ」
そう言いながら指を鳴らすと、
ナバイアはギュっと口を閉じて、
両手両足も、ビリリとマヒる。
静かになったナバイアを尻目に、
ゾーヤは、
「触れたらバカになる呪いの剣なんて、誰が触るものかい。最低の呪いだよ。人の理性をあそこまで壊す呪い……まるで麻薬だ」
徹底的に忌避の姿勢をとる。
そんな彼女を嘲笑するギ。
ギは、ゾーヤに対して、アホの子を諭すように、
「何か勘違いしているようなので、言っておく。虚影を手にした者は、多大な力を手に入れるが、しかし、それだけだ。脳を破壊するわけでも、特殊な『呪』をかけるわけでもない。『力を手に入れて狂ってしまう』という意味の比喩として『呪い』という言葉を使っているのであればまだしも、しかし、貴様は、直接的な意味で『呪縛』を使用している。それは誤りだ。勘違いをあらためよ。愚か者め」
その丁寧かつ愚直な解説を受けて、
『ギが嘘をついているわけではない』と理解するゾーヤ。
『100%の確信』を得ているわけではないが、
しかし、『ギが自分を欺こうとしている』という気配は微塵も感じていない。
実際のところそう。
ギが、ゾーヤごときを言葉で騙す理由は存在しない。
だからこそ、ゾーヤは、これまで以上に渋い顔をして、
「……じゃあ、なにかい? ナバイアは、ただ、単純に、強い武器を手に入れて調子に乗っているだけだっていうの?」
「そのとおりだ」
「……やれやれ……もっと賢い男だと思っていたけど、どうやら、とんでもなくバカなガキだったようだね」
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