58話 誰もがキチ〇イになる魅力。


 58話 誰もがキチ〇イになる魅力。


「どう考えても、今回、閃さんが、体を張ったのは、あなたのためではないでしょう。あと、回復魔法の精度では私の方が上なので、私が運びます。私のパートナーを返してください」


「マナてぃんのような、程度の低い女に、ウチの旦那は任せてられないにゃ。マックス存在値と美貌レベルを、最低でも、今の10倍以上にして、出直してきてほしいにゃ」


「……あなたの方が、ポテンシャル的には『遥かに上』だというのは認めますよ。しかし、こと回復サポートに関しては、あなたよりも私の方が上だと断言できます。戦闘面でのステータスを極力排除して、回復ビルドに特化した私に、器用貧乏のあなたが勝てる道理はありません。彼のことを本当に想うのであれば、私に任せてください」


「ツミカさんのスペックカタログに記載されているのは器用貧乏ではなく、器用大富豪にゃ。なんだって、誰よりもはるかにうまくこなせる。『もう、全部あいつ一人でいいんじゃないかな』という概念の集合的無意識と言っても過言ではないミラクルスペシャルウルトラスーパーメガトン美少女。それが、この、茶柱ツミカさんなのにゃ」


「ごちゃごちゃ、やかましい! ええから、さっさと運んで介抱せぇ!」


 ごちゃごちゃ、わちゃわちゃ、

 とにかく、全力でマウントを取り合っている美少女たちに運ばれていくヒーロー。


 嵐のように去っていったK5。

 残された中学生たちは、

 しばらく、どうしたものかと呆けていたが、


「これ……なに? どういうこと?」


 と、誰かが、ボソっと口を開いたことで、

 それまで溜まっていた疑問や不可解が爆発。


 あの化け物はなんだったのか、

 あのヒーローは何者なのか、

 K5とどういう関係なのか、


 そういう、出発点の疑問から、

 あのヒーローがK5全員と結婚したというウワサに繋がり、

 『さもありなん』という理解につながりつつも、

 しかし、繋がったのは、あくまでも、その点だけで、

 結局のところは、何一つ分からない、

 という、ナゾナゾしいカオスの中でモヤモヤするしかなかった。




 ★




 時空ヶ丘学園の南西にあるホテルの最上階。

 荘厳な雰囲気の会議室。

 そこでは、各国のフィクサーが、深刻な顔で、

 『未来の枠組み』について話し合っていた。


「薬宮トコの呪いによって召喚されたアウターゴッドを吸収。神話狩りが手も足も出なかった無数の高位GOOを連続で討伐。その後、なぜか召喚されたアウターゴッドも撃破……凄まじい功績だな」


 大幹部の一人、アメリカ代表のナバイアが、

 報告書片手に、ぶつぶつと、


「で、これを信じろと?」


 そう言いながら、

 この報告書を提出してきた紅院正義を睨みつけ、


「貴様、正気か?」


 と、強い口調で言うと、

 正義は、フラットな視線で、ナバイアの目を見て、


「目撃者は多数。今回召喚された『アウターゴッド・マイノグーラ』と、人類の希望『センエース』の死闘は、我が学園の生徒・職員の何名かが録画している。その映像証拠も先ほど提出させてもらったはずだが?」


「見たさ。非現実的な光景だった。ハリウッドでは、あの手の『人目を引くハデハデしい豪快な映像』を日夜鋭意制作している」


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