50話 テンプレにはテンプレで。


 50話 テンプレにはテンプレで。


「諦めることを諦めた時、いつだって、俺は、少しだけ自由になれる。この感覚が……俺は少しだけ好きだ。大好きじゃねぇけどな」


 そんなセンの言葉に対し、

 マイノグーラは、冷めた顔で、


「自由ねぇ。私の目には、まったくもって自由には見えないが。むしろ、ありとあらゆる縛りでがんじがらめになっているようにしか見えない」


「その視点は正解だ。けど、たった一つの視点だけで完成するほど、俺の人生は平面的じゃねぇ。もっと複雑な多面体だ。裏から見れば、また違った面が見えてくる。裏表だけじゃなく、もっといろいろな多次元を抱えて、俺は必死に生きている。だから『深みがある』なんて言いたいわけじゃねぇ。深みや厚みがあるかどうかはどうでもいい。ただ……」


「ただ、なんだ?」


「ずっと一緒にいる俺が、まだまだ俺をまったく理解できてねぇのに、会って間もないテメェに、わかったような口をきかれるのは心外。それだけの話だ」


 そう言いながら、

 センは、静かに武を構えた。


 流れはシンとしているのに、

 しかし、内側はゴウゴウと燃えている。


 無数の性質を孕んだオーラ。

 何色もの輝きを内包する虹の輝きは、

 不定形の覚悟を有するセンの原動力としては、

 非常にマッチしていると言えた。



「いくぞ、マイノグーラ。――殺してやる」



 虹色のオーラにキレッキレの殺意を込めて、

 センは空間を駆け抜けた。


 真・究極超神化プラチナムによって底上げされたステータスが、

 虹気の補正を受けたことで、センの武と、豊かに重なりあって、

 センエースという概念を美しく輝かせる。



「……見える、見えるぞ、マイノグーラ。全部ではないが、俺にも、お前の動きが見える」



「見えるだけでは話になるまい。対応できなければ」


「見えもしなかった頃と比べれば大きな進歩だ。これまでは、ほぼ0だったが、1になった。その一歩を進めたのであれば十分。あとは、俺が積み重ねてきた器で補完する。何もしてこなかったヤツのゼロイチと、俺のゼロイチを一緒にするな」


 そう言いながら、

 センは、果敢に、マイノグーラの懐へと飛び込んでいく。


 とにかく全速前進。

 怯むことも恐れることもなく、

 前へ、前へ、前へ。


 その圧力に、マイノグーラは、暑苦しさを感じた。

 圧迫感や恐怖などは感じない。

 まだまだ、そこまでではない。


 しかし、暑苦しさは確かに感じた。



「虹気を会得した程度で超えられるほど、私は低いハードルではない。オーラのキレは上がっているが、それがどうした? パワーもスピードも足りない。すべてが、まだまだ足りていない」



 そう言いながら、マイノグーラは、出力を上げた。

 感覚で言えば、異常に速いハエが目の前をブンブン飛び回っている感覚。


 壁に止まってジっとしているのであれば、そこまで目障りでもないが、しかし、こうして、目の前を、ブンブンブンブンと飛び回られると、普通にウザったく感じる。



「落ちろ、蚊トンボ」



 そう言いながら、雑に振り払おうとしたその動きに対し、

 センは、


「それは悪手じゃろ、ありんこぉお!」


 鮮やかに合わせていく。

 非常に高度なカウンター。

 積み重ねてきた年月と回数を感じさせる、

 完璧と言っても過言ではない一手。

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