36話 『センエース』VS『カイザーウイングケルベロス』。


 36話 『センエース』VS『カイザーウイングケルベロス』。


「負けないでえぇええええ!! お願いぃいいい!」

「がんばってくれぇえええ!! 本当に、頼むからぁああ!!」

「うわあ、うあぁ、うわぁああ! どんどん迫ってきている! マジでお願いだから、耐えてくれぇえええ!!」


 その声援を受けた当人――センエースが、

 今、何を思っているかと言うと、


(うるせぇえ! 気が散るぅうう!)


 周囲のガヤに対して、単純にムカついていた。


(応援したってどうにもならんだろうがぁ! そんなことをしているヒマがあるなら、この場から、どうにかして逃げることを、必死になって考えんかい、このくそぼけどもぉお!)


 心の中で叫びながら、

 ヘシ折れるほどに奥歯をかみしめ、

 血管をブチ切るほどの勢いで、


「がぁああうぅううううううううううううううううううっっ!! ぎぎぎぎがががうぅぅううううううっっっ!!」


 放った異次元砲に、さらなる魔力をぶち込んでいく。

 その圧力に対し、

 上空のカイザーウイングケルベロスは、


「ちぃっ!」


 と舌打ちをしながら、

 サイドロールの緊急回避をはさんで、

 異次元砲の撃ち合いを放棄する。


 スカされたことで、蓋(ふた)を失ったセンの異次元砲は、

 雲を突き破って空へと食い込み、そのまま静かに霧散した。



「ぜぇ……ぜぇ……はぁ……」



 異次元砲の撃ち合いだけで、

 すでに疲れ切っているセン。


 そんなセンに、カイザーウイングケルベロスは、


「おいおい、マジかよ。信じられねぇぜ。私の異次元砲に、人間ごときが対抗してくるなんざ……実際、ありえねぇ話……貴様は、いったい何者だ?」


 その問いを受けて、

 センは、


「ちょ、まっ……いや、しんどい……ちょっと待って、ほんと……はぁ……はぁ……」


 息を整えるので精いっぱい。


「はぁ……はぁ……ふぅ」


 数秒をかけて、どうにかこうにか、息を整えたところで、

 業を煮やしたカイザーウイングケルベロスが、


「何者だと聞いている。答えないのであれば、即座に食い殺すぞ、クソガキ」


「……な、何者でもねぇよ。お前の目にうつったとおりの、たんなるクソガキだ」


「何者でもない者が異次元砲を放てるわけがないだろう。ナメるなよ」


「別にナメちゃいないが……」


 そう言いながら、

 センは、カイザーウイングケルベロスから視線を逸らすことなく、

 腕を真横に伸ばして、


「異次元砲」


 凶悪な照射を放つ。

 横に放たれた異次元砲は、天に放たれた異次元砲と違い、

 見えない壁にぶつかってから霧散した。


 それを受けて、センは、


(極大魔法でも、傷一つつかねぇか……俺の力じゃ、周辺を覆っている『見えない壁』を砕くことはできないな。どうやら、瞬間移動なら出来るっぽいが、時空跳躍以外に、この『見えない壁』の中から避難する方法はなし……つまり、中坊どもを逃がす方法はなし。やばいな……)


 周囲にうじゃうじゃいる『大量のお荷物』を抱えて、

 これから、アウターゴッドと、その召喚獣に挑まなければならない。


 その事実を認識したことで、センの全身から冷や汗が流れた。


(……『お情けの譲歩』が欲しいのはこっち側だってのに……なんで、俺の方が、こんなに『どでかいハンデキャップ』を背負わないといけないんだ……)


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