13話 離婚にゃ!


 13話 離婚にゃ!


 センは我慢をしているだけ。

 その我慢は、決して、『理性による自制』などではない。

 自分の理想でがんじがらめになっているだけ。


 ――あまりにも意味不明。

 美少女たちの視点だと、センエースは、

 あまりにも奇怪すぎる変態。


 普通なら、呆れて、愛想をつかすところなのだが、

 しかし、彼女たちは、ほとんど、

 『センエース中毒』のような状態になっているので、

 『センエースのダメっぷり』をいくら目の当たりにしようと、

 抜け出すことが、どうしてもできない。



 ――その後、まだまだ、うだうだと、

 『センエース』VS『ヒロインズ』の攻防は続いたものの、

 センが秘奥義の『寝言』と『寝相の悪さ』を巧みに操り続けた結果、

 結局のところ、一線を超えることなく、この日の夜は無駄に消費された。


「ジブン、なんやねん!」


 と、ガチの怒り&悲しみに震えるトコを尻目に、

 センは、


「zzz……マジで、なんか、ゴメン……zzz」


 としか言えなかった。

 あまりにも無様が過ぎる。

 情けないにもほどがある。




 ★



 ――翌朝、


「いやぁ、よく寝たぁ! みんな、おはよう! いい朝だねぇ!」


 と、目の下にたっぷりのクマを刻んでいるセンが、

 背伸びをしながら、さわやかな朝を迎える。


 最終的に諦めて、普通に眠りについた彼女たちは、

 そんなセンの朝の挨拶で、ゆっくりと目をさました。


 茶柱は、目をこすりながら、

 センの顔を見つめ、


「にゃーっ!」


 と、いつもどおりの奇声をあげながら、

 センの顔面にグーパンをいれていく。


「いったいなぁ! あさっぱらからぁ! なにすんだ、てめぇ!」


「それはこっちのセリフにゃ!」


「いや、俺のセリフで合っている。間違いなく」


「損害賠償を請求するにゃ!」


「なんでやねん。グーパンによる損傷を受けたのは俺だけで、お前は、何の被害も被っていないだろうが」


「何も失っていないから問題なんだにゃ!」


 そう叫びながら、二発目のグーパンをセンの顔面にいれる茶柱。

 彼女の訴えに対し、センは、


「……ぐぅ」


 何も言えず、黙り込む。

 ギリギリのところで『ぐうの音』は出ているものの、ヘコんでいないワケではない。


 ――そんなセンに、茶柱は、

 三枚の紙をセンに突き付けて、


「もうやってられないにゃ! あんたとは離婚にゃ!」


 ヒステリックに、そう叫びながら、


「さあ、さっさと、この離婚届に名前を書いてほしいにゃ!」


 と言いつつ、ペンをわたしてくる。


「いや、まあ、別にいいんだが……離婚届が、なんで三枚……」


 などと言いつつ、

 渡された三枚の離婚届の名前を見てみると、

 それぞれ、紅院、薬宮、黒木の名前が刻まれていた。


「……えーっと……あー、んー」


 どうしたものかと悩んでいると、

 同じく、離婚届が三枚であることに疑問を抱いたトコが、

 センの手の中にある離婚届を覗いてみると、


「おどれ、何を、勝手に、あたしらの離婚届を書いてんねん! それも、これ、筆跡、メチャメチャ真似てるやないかい! 軽いギャグとかやなくて、ガチの本気で離婚させにかかっとるやないか、このくそぼけぇえ!!」


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