76話 新たなる敵。
76話 新たなる敵。
(なんだ、その目ぇ……こっちに、『何かしら』をゆだねてくるような目はやめてくれぇ……その手のアレコレを、軽やかに受け止めきれる度量なんて、俺にはねぇんだよぉ……ああ、ダメだ、この空気、ムリだ……)
センが、心の中で、ドップリと辟易していると、
黒木が、
「ちなみに、センさん」
「え、あ、はい、なんすか?」
「あなたは、どうでしょう? 好きな人はいるのですか?」
「……」
その質問を受けて、
センの頭の中で、
複数人の顔が浮かんだ。
その複数人の中に、黒木の顔も入っていたので、
自分で普通にビックリしたりもした。
(……)
グルグルと、頭の中で、
色々な残影が浮かんでは消えて、
パっと開いては散っていった。
言葉にできない、無数の感情が、
心の中で、名状しがたいモヤモヤになって、
センの全身を包み込んでいく。
「……いるよ……たぶんな」
その返事を受けて、黒木は、
「そうですか、なるほど」
と、低めのトーンで、そう応えた。
「……」
「……」
おたがいに、なんだか気まずい無言の時間を過ごす。
およそ、10秒ほど、
重たい無言の時間を過ごしていると、
そこで、
「ん?」
ピシっと、何かが割れる音がした。
その直後、
センの視界がグルグルと回る。
(……転移っ……)
すぐに、飛ばされたと気づいたセン。
視界が戻った時、
センは、真っ白な空間にいた。
飛ばされたのは、センだけではなく、
黒木も一緒で、
「……こ、これは……」
困惑している黒木を尻目に、
センは、
(……なかなかスムーズにさらってくれる。そこらのザコではないな……)
抗おうと思えば、
どうにか出来ないこともなかったが、
しかし、センは、あえて、無抵抗を貫き、
この空間まで、さらわれることを選んだ。
(……ガタノトーアやクティーラと同じランクだとありがたいんだが……)
などと、考えていると、
時空を切り裂いて、
二体の神格が姿を現した。
「グヒヒ……はやいもの勝ちだぜ、イソグサ」
「ゾス、この私に競争を挑むのか? 愚かしい。分けてくれと素直に頼めば、余りを恵んでやろうと思っていたというのに」
「ウソつけ、てめぇは、全部、独り占めにする気だろうが」
「そんなことはない。余りがあるなら分けてやるさ。……『余りがあれば』の話だが」
爬虫類の頭を持つ四本腕のリザードマン型の化け物と、
触手に囲まれた一つ目を持つカエルっぽい人型の化け物。
前者は、ゾス=オムモグ。
後者は、イソグサ。
どちらも、
ガタノトーアに匹敵する、S級上位のGOO。
その風格を、一目で感じ取ったセンは、
(いいねぇ! こいつら、十分、強い! あっちの『触手まみれの一つ目』にいたっては、ガタノトーアよりも、上っぽい)
と、ほくそ笑んでいた。
(これで合計4体。一人につき一体の眷属を護衛としてつけられる)
ぬるりと首をまわし、トントンとステップをふみながら、
軽いストレッチを終えると、
イソグサたちを睨み、
「お前ら、この女を殺しにきたのか?」
と、黒木を指さしながら訪ねる。
すると、イソグサが、
「そこの下等生物、口の利き方に気をつけろ。私は外なる神に成るもの。貴様ごときが気軽に話しかけていい存在ではない」
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