24話 どっちがパチモノ?


 24話 どっちがパチモノ?


「……200億かけてスタートって……じゃあ、『そのレース』のゴールラインを割れる日は、いったい、いつになるんだよ」


「それが知りたくて、今も俺はもがいている……と言ったら嘘になる」


「嘘なんかい」


「嘘というか……まだ、その境地には達していないって感じかな。ゴールが見えてくれば、ゴールを求めてしまうだろうけど、今の俺は、スタート地点に立っただけ。だから、頭にあるのは、ゴールの切り方じゃなく、スタートの決め方だ」


「……」


「そうじゃないと前には進めない。どこがゴールかわからない超長距離レースで、最初からゴールを求めていたら、身がすくんで、最初の一歩すら踏み出せねぇ」


 などと、ペラペラおしゃべりをしてから、

 スーパーセンエースは、武を構えて、


「なんだってそう。最初の一歩だ。それさえ踏み出せれば、最悪、惰性でも前に進める。『惰性でやるならやめちまえ』って視点もあるが……けど、それは、少々極端だと俺は思うね。なんだっていいんだ、前にさえ進めているのなら。ゆっくりでも、非効率でも」


 そう言いながら、

 スーパーセンエースは、センに対して『組み手』を求めた。


 センの目にも見える速度の武で連打。

 ギリギリのところを攻めていくスーパーセンエース。


 高次の対話。

 お互いを『知るため』だけの作業。


「くっ……くぉおっ! しんどいな、クソがぁ!」


 本当に、ギリギリのラインなので、

 押し切られはしないが、

 しかし、だからこそ、もっともしんどいという事実がのしかかる。


 『耐えられるなら、耐えなければいけない』という心の義務に縛られる。


「パチモン……お前は、俺が『今までに見てきた、どのパチモン』よりも上質だ。お前よりも、『数値が高いだけのパチモン』なら、これまでに、何体か見てきたが……お前ほど、『芯のある武をもったパチモン』は他にいなかった」


 闘いの中で、スーパーセンエースは、

 ボソっと、




「……こうなってくると、あるいは、俺こそが、パチモノであるという可能性も出てきたな……」




 そうつぶやいた。

 その言葉を受けて、

 センは、


「……聞かせろよ、スーパーセンエース。……もし、俺がオリジナルで、お前こそがパチモンだった場合……お前はどうする?」


 その問いかけに対し、

 スーパーセンエースは、

 ニっと笑って、




「三千世界の鴉を殺し、嫁と昼まで寝て過ごすさ」




 などと、

 解釈に苦しむ言葉を残した。


 センは、


「意味がわからん」


 と、素直な本音を口にしつつ、

 スーパーセンエースの連打をさばいていく。


 その途中で、

 スーパーセンエースが、


「仮に、俺がパチモンだったとしても……」


 そう言いながら、

 全身に強大なオーラをためて、


「それでも……」


 グググっと、


「……いや、だからこそ叫べる何かも……きっとあるんだろう」


 大きく膨らんでいく。


「俺の全部を見せてやるよ……とくと心に刻み込め」



 またたいて、輝く。

 命の華が萌ゆる。


 そして、




「――ヒーロー見参――」




 スーパーセンエースは、宣言してみせた。

 英雄の証明。

 命の最果てに届いた王の真髄。

 ここから先、スーパーセンエースはもっと高く飛ぶ。

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