10話 俺は飛べる……飛べるかんねっ。
10話 俺は飛べる……飛べるかんねっ。
「これが……オメガレベル6000の壁を超えた、究極完全なる俺の姿だ!」
叫んでから、
腹の底に力を込めて、
「はぁあああああっっ!!」
全身の魔力とオーラを、これでもかと練り上げていく。
研ぎ澄まされていく。
集中力が一点に収束。
血走った目で、世界をにらみつける。
全身がビリビリと痙攣している。
体中の気血が沸いている。
――それは、事実……なのだけれど、
「……さっきから、魔力とオーラを練り上げているだけじゃないか」
アダムの言葉通り、
センは、いっこうに、次のステージに進むことなく、
ただ、ただ、『オメガレベル6000』の範囲内で、
出力を限界スレスレまで捻出しているだけにすぎなかった。
「あわてるなよ、アダム。ここからだ……お前の言う通り、どうせ、俺は覚醒する……俺も、ちょっとは、俺に詳しいんだ。俺はヤバい。何がどうとは言えないが、基本的に、俺は『ビッグになることが決まっている』……そんな気がしてならない。さあ、驚け。そして、喝采するがいい。これが……命の最果てだ……」
そう言いながら、
さらに出力をあげようとするが、
すでに、『現在の限界』まで出力を上げ切ってしまっているので、
特に大きな変化はない。
二秒……五秒……十秒……と、
特に何でもない時間が過ぎていき、
十五秒が経過したところで、
さすがに、アダムが、
「まだか?」
と、冷めた目で問いかけると、
センは、
「もちつけ! これだから、早漏はイクナイ! 心配しなくとも、ガイアが『もっと輝け』と、俺にささやいている! 俺は飛べる! 飛べるかんね!」
普通に焦りながら、
必死になって、自分の扉をこじあけようと、
オーラと魔力に『ブラックな無茶ぶり』を要求し続けているが、
しかし、何も変化は起きない。
いや、変化がなかったわけではない。
全力で、気力を練り上げすぎて、
ただただ、普通に疲れてきた。
ゆえに、ついには、
「……ぶはぁっ……はぁ……はぁ……はぁ……やばぁ……しんどぉぉ……」
出力を上げるのをやめて、
フラットな状態にまで戻るセン。
そんなセンを、冷めた目で見るアダム。
「……」
その目が、あまりに冷たかったため、
センは、普通に顔を赤くしながら、
全部をごまかすため、無駄に大声で、
「そんな目で見るんじゃねぇ! 人間、調子が悪い時だってあるだろう! 今日は、その……『調子の悪さ』がエグい日だったんだよ! いつもだったら、いけたんだ! そうさ、いけるに決まっているだろう! 俺だぞ?! いけないわけがないんだ! でも、今日は、ちょっと熱があるし、お腹も痛いし、頭痛も痛いし、火事が燃えているし、危険が危ないし……」
などと、しょうもない言い訳をしはじめたセンに、
アダムは、
「これが最後のチャンスだ。覚醒するなら、今のうち。もう時間は与えない。本来、『積み技』を重ねるには、そのための前提を積まなければいけない。これまで、貴様に猶予をやったのは、『どうせ、妨害しても、それを糧にして、より鬱陶しく覚醒するだけだろう』と思ったから。しかし、本当に『今のまま』で終わるだけのクソムシなのであれば……」
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