3話 アダムは強すぎる。


 3話 アダムは強すぎる。


(この女が言う『主上様』ってのは、おそらく、この世界の神『センエース』……結婚してんのか、名前をもらっただけなのかは知らんけど、とにかく、何かしら深い関係ではあるんだろう……)


 センは、まだ残っている知性の部分をフル回転させて、


(で、この女の言動から察するに、俺の『顔』は、そいつに似ている。もし、この女に影響をあたえた『日常的にテンプレを使いこなしている日本人』が、この世界の神『センエース』だとしたら……)


 多角的に考えてみて、

 センは、



(パチモノなのは、そいつか……それとも俺か……)



 少しだけ悩んではみたものの、

 すぐに、


(無意味だな。この場で考えて答えが出る問題じゃねぇ……それよりも、今は、目の前の、こいつをどうにかする方法を考えねぇと……)


 集中しはじめるセン。

 解き放たれた感動から、

 少しフワフワしていたが、

 しかし、アダムという強敵を処理するために、

 脳が戦闘寄りにシフトしはじめる。


「……いくぜ、アダム……言っておくが、俺は強いぞ。自由になった俺は……さらに、高く飛ぶ!」


 そう言って飛び出したセンを、

 アダムは、


「さらに飛ぶ? 不思議だな。私の目には、最初から最後まで地を這っているようにしか見えないのだが?」


 冷めた顔でそう言いながら、

 手刀で、サクっとセンの首をはねていく。


 首を飛ばされたセンは、

 反射的に、『飛ばされた自分の首』を右手で掴み、

 そのまま、デュラハンのように、


「首を飛ばしたくらいでいい気になるなよ、クソアマ。自由になった俺は、この程度じゃ――」


「誰も、一手で終わるとは言っていない」


 そう言いながら、

 アダムは、



「――『オーラドール・アバターラ・スカーレット』――」



 分身系の魔法を使い、

 合計10人にまで増えると、


「「「「「「「「「「――連牙・神速閃拳――」」」」」」」」」


 完璧な連携の鬼畜なラッシュで、

 センをズタズタにしていく。


「この程度で、俺が――この程度――この――いや……あの……」


 センは、謎の『驚異的な生命力』で、

 アダムの猛攻に、なんとか耐えていたが、

 しかし、アダムの火力が、

 想像をあまりにも超えていたため、

 すぐに、


「ちょ、まっ――タイム、タァアアイムッ!!」


 全力で『待った』を要求する――ものの、

 しかし、アダムは、


「戦闘中にブレイクタイムをいかに確保するか、そこに頭を悩ませるのも、殺し合いの醍醐味。そうだろう?」


 そう言いながら、

 一切、休むことなく、

 センに攻撃を与え続ける。


 アダムのオーラドール・アバターラは、

 ハンパな分身ではなく、

 一体一体がキレッキレに仕上がっている。


 アホほど『磨き上げてきた』のが伝わってきた。

 神の右腕を名乗るために積み上げてきた『狂気の覚悟』がうかがえた。


 何もできず、ボッコボコにされるセン。

 力量差が、あまりに大きすぎた。


 アダムは強すぎる。


「ちょ、まっ……お前、強すぎるぞ! いくらなんでも、カンツたちと、違いすぎる! 反則だ! こんなもん、聞いていない!」


「ジャクリナたちのぬるい神闘と、私の神闘を一緒にするな。私は、主上様から直々に武の道を照らされている身。環境の差は、戦力の決定的な差」

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