51話 理性の理解。


 51話 理性の理解。


 オメガ火ゴブリンの両手の中で、グググっと、『バスケットボール』サイズの、まあまあデカい『火の球』が出来上がる。


 それを、オメガ火ゴブリンは、ドッジボールの要領で、

 容赦なく、センに向かって投げつける。


「あらよっとぉっ!!」


 投げつけられた『火の球』を、軽やかに緊急回避するセン。

 オメガ火ゴブリンの『火の球』は、高火力だが、

 『投擲(とうてき)速度』と『タメ時間』の精度が低いため、

 集中していれば、避けることは可能。


(タメ時間がもう少し短かったら、瞬間移動とのコンボで『不可避』を決め込まれて、だいぶヤバかったかもしれないが……この程度の攻撃なら、集中力を切らさない限り、永遠に避け続けられる……)


 あたれば死にそうな攻撃だが、

 当たらなければどうということはない。


 闘いが長引くにつれて、

 センの体力とメンタルは削られていくものの、

 しかし、『オメガ火ゴブリンとの闘い方』の『要領』が掴めてきたため、


「……オメガ火ゴブリン……てめぇは確かに『強い』が、しかし、本当に、『それだけ』だ。それじゃあ、俺は殺せねぇ……」


 闘いのさなか、センは、ボソっと、


「お前の攻撃は強いが、重くねぇ……いや、もちろん、物理的な意味での『重量感』は普通に感じるが……しかし、芯の部分が軽い……そんな気がする。知らんけどな」


 オメガ火ゴブリンに、センの言葉を理解する能力は備わっていない。

 そんなことは、センも、ある程度、理解できている。


 だから、これは、オメガ火ゴブリンに向けての言葉ではない。

 現状の言動は『セン自身が、オメガレベルを理解しようとしている』――という、それだけの話。


「強いだけで軽い――それじゃダメだと、ハッキリわかる……おかげで、少しだけ、俺がこの先『追い求めるべきもの』が理解できた気がする……」


 自分を磨くにしても、何を中心に求めていくべきなのか、

 その辺を正しく理解しておかなければ、いびつに壊れて腐るだけ。


「貴重な経験だった。礼を言うぜ、オメガ火ゴブリン」


 そう言いながら、

 センは、限界まで集中力を底上げし、


「――逆気閃拳――」


 相手の気を逆流させる一撃を放つ。

 完璧なタイミングで、敵の中枢をかき乱す。

 その結果、


「ギャギャギャッ!!」


 オメガ火ゴブリンは、自身のオーラのねじれによって、


「……ギャッ……」


 あっさりと、命を失った。

 それなりの死闘だったが、

 最後は非常にあっけないものだった。



「……ふぅ……」



 オメガ火ゴブリンの死を見届けた直後、

 センは、脱力し、その場に尻もちをつく。


「……はい……勝ちぃ……」


 かなり疲れた表情で、勝利宣言をするセンに、

 オメガシャドーは、軽く拍手をしつつ、


「お見事。さすが『究極超神の序列一位』を名乗るだけのことはある」


「お前さぁ……俺が『一度も言っていないこと』を、さも『常に言っているかのよう』にのたまうの、やめてくれない? 『へのつっぱり』も『究極なんたら』ってセリフも、俺は、一度も口にしたことがないんだわ」


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