92話 綿棒の使い方。

 92話 綿棒の使い方。


(……まさか、ループしても、記憶の一部は残るのか? ……まあ、そういう現象は、ループモノのアニメや漫画だと、お約束ではあるが……)


 センが頭を回転させていると、

 そこで、紅院美麗が、


「私も、不思議と、疑う気になれなかった。『だいぶ昔に見た映画』のあらすじを聞かされた時のような……というと、また少し違うかもしれないが、けれど、まあ、とにもかくにも、素直に受け入れることができた」


 続けて、かぶせるように、

 茶柱罪華が、


「ツミカさんも、『ツミカさんと付き合いたいあまり、センセーが、十時間耐久の土下寝までかましてみせた』という話を聞いた時、純粋に『だろうな』と思ったにゃ」


 と、『ボケ顔』でそう言ったのに対し、

 トコが、


「エグい妄想を垂れ流すな、ボケ! オジキは、一言も、そんなことは言うとらんかったやろ!」


 ちなみに、言うまでもないが、

 紅院正義に、タイムリープについて語った際、

 『彼女たちとの、男女的な意味での関係性』について、

 センは、徹底して省略した。


 なんだったら『人間的に軽く嫌われていた』みたいな感じで、

 『逆盛り』を施したうえで話したぐらいである。


 ゆえに、当然、今の彼女たちが、

 『一周目の時、茶柱罪華が、なし崩し的に【センの彼女らしきポジション】におさまっていた』

 ということなど、知るはずがない。


(茶柱の、潜在的な『鋭角すぎる中ボケ』が、たまたまハマっただけか……それとも、あいつ、もしかして、『一部の記憶』が残っているだけではなく、もっと具体的に何かを覚えて……)


 トコとミレーは『正義から聞いた話を信じた』というだけだが、

 ツミカは『それ以外にもいくつか覚えているのではないか』、

 という疑問を抱くセン。


(可能性としてありえるのは……『寿命と引き換えに願いが微妙に叶う』とかいう『例の何かしら』を使って、記憶の一部を取り戻した、みたいな……)


 などと、考えていると、

 そこで、ツミカが、


「妄想なんかじゃないにゃ! センセーは、いつだって、ツミカさんにメロメロで、今だって、正面に座っているのをいいことに、隙あらば、ツミカさんのパンツを覗き見ようと、目を光らせているにゃ」


 その『ウザさが暴走している発言』に対し、

 センは深いタメ息をつきつつ、


「……うん、あの、もう、俺のことを、『お前のパンツを見たがっている変態』ということにしてくれていいから、ちょっと黙ってくれない?」


 『相手にしない』という大人な対応をとるセンに、

 罪華は、たたみかけるように、


「変態にゃぁ! ここに、美少女のパンツをはぎとって、お尻に綿棒をぶちこもうとしている、とんでもないド変態がいるにゃ! おまわりさーん!!」


「……反論したら、倍になって返ってくるだろうと思い、恥を忍んで『言いがかり』を受け入れたら、五倍になって返ってきた……なんだ、このガード不能の地獄……誰か、助けて……」


 と、そこで、それまで静観していた黒木が、


「ツミカさん、閃さんが、吐きそうな顔をしています。さすがに、その辺で勘弁してあげてください。あまりにも可哀そうで見ていられません」


「ん~?」


 黒木の発言に対し、

 ツミカは、黒目をギュっと縮めた三白眼になり、


「なんだか、今のマナてぃんのセリフ、『私の彼氏をイジめないで』みたいな感じで聞こえたにゃぁ……」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る