83話 一瞬の出来事。


 83話 一瞬の出来事。


(これが、フラグである可能性は大いにある……)


 そう認識したセンは、


(……お望み通り、テロリストどもを叩き潰してやるよ……)


 心の中でつぶやきつつ、

 テロリストから、『トイレの許し』を得て、

 教室の外に出ると、


 ――そこからは豪速だった。


 仮面を装着し、

 残像を置き去りにして、

 瞬間移動で、各教室を制圧していく。


 相手に、自分を認知させる余裕など与えず、

 ひたすらに、一瞬で、

 音速の首トーンをかましていく。


 速度を重視したため、

 おそらく、何人か、後遺症が残るだろう――

 が、そんなことを気にする余裕はなかった。


(行動には代償が伴う。『知らなかった』が通じるほど世界は甘くねぇ。『ガキ殺しの作戦』に首を突っ込んだ、そんな自分の選択を恨め)


 心の中でつぶやきながら、

 センは、目にもとまらぬ速度で、

 テロリストたちをシバき倒していく。


 200人を殲滅するのに、かかった時間は、およそ3分半。

 一人一秒弱のペース。


 殲滅完了の後に、

 センは、ハンカチで手を拭きながら、

 教室に戻る。


「いやぁ、完璧な快便だった。これ以上ない快便だった」


 などと、別に言わなくてもいい言葉を口にしつつ、

 教室に中に入る。


 当然、誰も、センに注目などしていない。

 『気絶しているテロリストたち』の介抱で忙しそうだった。


 センは、シレっとした顔で、

 『特に何もせず、壁にもたれかかってスマホをいじっている反町』に、


「何があった?」


 と、声をかけると、


「知らん。なんか、気付いた時には、テロリストが気絶していた」


「二人同時に?」


「現場を目撃したヤツの証言だと、どうやら、仮面をかぶった何者かが、瞬間移動で現れて、テロリスト二人に首トーンをかましていったらしい」


「なんだ、そのふざけた話」


 と、そこで、『反町の友人』といえなくもないクラスメイト『田中』が、


「マジだよ。目撃したのは俺。ちょうど、お前ぐらいの背丈の仮面をかぶったヤツが、テロリストの背後に、パッパッと出現して、首にチョップをいれていったんだ」


「信じがたいねぇ」


「……別に信じなくてもいいけど、俺以外にも、何人か目撃しているぞ」


 『誰にも見えない速度でコトをなす』のがセンの理想だったが、

 残念なことに、まだ、そこまでのスピードは出せない。


 将来的には分からないが、

 今のセンのステータスだと、

 素人の目でも終える程度の『時空移動』しか出来ない。


 と、そこで、田中が、センをジっと見つめて、



「……背丈だけじゃなく、髪型と体型も、お前に似ていた気がするな……」



 ボソっとそうつぶやき、


「もしかして、閃……お前がやったのか?」


 と、たずねてきた。

 センは、ニっと微笑み、


「バレたか」


 と、チョケてみせた。


 その表情を受けて、

 田中は、


「……ま、んなワケねぇか……」


 と、センの思惑通りの解釈をしてくれた。



 ★



 ――200名のテロリスト全員が、ほぼ同じタイミングで気絶した。


 そのセンセーショナルなニュースは、

 またたくまに校内を駆け巡り、


 1時間も経ったころには、


 『今、校内で、その謎現象を知らない者は一人もいない』


 という状況が出来上がった。


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