58話 下着も日記も全て漁っていくスタイル。

 58話 下着も日記も全て漁っていくスタイル。


「最上階のフロアは全てツミカのものです」


「……なるほど。これが、噂のセレブ買いってやつか」


 などと言いつつ、一部屋ずつ、カギをこじあけて、

 茶柱の遺体を探していく。


 生活感のある一室のリビングに、

 首から上がない茶柱の死体が転がっていた。


 その死体姿を見て、

 一瞬、気が遠くなりかけたが、


「……ふぅぅううう」


 深く息を吐くことで、どうにか、自分の感情を律する。


「……最悪……きわまる……」


 奥歯をかみしめながら、

 センは、茶柱罪華の死体を漁っていく。


 何度も吐きそうになったが、

 鋼の精神で耐えていく。


 結局のところ、何も見つかりはしなかった。

 ――と、理解できたところで、

 センは、


「……図虚空、何か、魔導書の気配とか、感じたりしないか?」


 そう問いかけるが、


「何も感じない」


「……本当に使えねぇSiriだ」


 吐き捨ててから、


 センは、家宅捜索を始めた。


 空間内に存在するすべての収納スペースをひっかきまわしていく。


「……『最低』がとまらねぇな……」


 下着や衣類などのスペースは、

 すべて、カズナに任せ、

 それ以外の全てを、センが担当する。


(久剣がいてくれてよかった……下着を漁るのは、さすがにしんどすぎるからな……)


 心の中で、そんなことをつぶやきながら、

 魔導書が隠されていないか捜索する。


 その途中で、センは、茶柱の日記を見つけた。


(日記をつけるタイプには見えなかったが……)


 そんな事を想いつつ、

 読むかどうか一瞬躊躇する。


 ――が、すぐに、


「……当人の死体を漁っておいて、なにをいまさら……」


 覚悟を決めると、

 日記帳を開く。


(日記というか……『スケジュール手帳』兼『一口メモ』的な感じか……)


 総理の娘ともなれば、

 『やらなければいけない事』というのも、

 それなりには存在する。

 皇室ほど徹底した管理がされるわけではないが、

 しかし、『列強の代表』という地位はやはり重たく、

 その家族ともなれば、『義務』の量もそれなりに多い。


「……グチが多いなぁ……」


 『あのハゲ、死ねばいいのに』

 とか、

 『あのデブ、二度と、こっち見るんじゃねぇ』

 などと言った、罵詈雑言が各所にメモられていた。


 そんな、一言グチが散見される中で、

 他と比べて明らかに丁寧な長文が記されていて、

 その内容は、


『ユウキが死んだ。スッキリした。ああいう人間は死ぬべきだと思う。ああいう人間は、この世界にいるべきじゃない。意味不明。大嫌いだ。死んでくれて、本当に助かった。ありがとう、運命。おかげで、惨めな思いをしなくてすむ。よかった、よかった。マジで嫌いだ。あんなやつ。もういっそ、あいつだけじゃなく、全部全部、なくなってしまえばいい。トコもミレーもマナミもカズミも全員、嫌い。全員、死ね』


 書き殴られた言葉を読んで、

 センは、軽くタメ息をついて、


(……これも、まあ、本音なんだろうなぁ……もちろん、これが全てじゃないだろうが……これだって、間違いなく、あいつの心にあるガチの想い……)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る