43話 みんなの心の中にある魔導書。

 43話 みんなの心の中にある魔導書。


(……願いを叶えてくれる……っていうのがガチだとしたら、俺の電話番号だけを入手するってのは、だいぶおかしな話……)


 心の中で、そうつぶやいてから、


「ちなみに、その『願いを叶えてくれる神話生物』の名前は?」


「ニャルラトホテプ」


「……知っている名前だな。確か、アウターゴッドの一柱」


「召喚された瞬間、世界が終わる系のアウターゴッドではなく、だいぶ理性的かつ、人間に対して友好的なアウターゴッドにゃ。まあ、友好的というか、『オモチャ』や『ペット』のようにおもっているって感じだけどにゃぁ」


(ニャル様か……人を翻弄するのが大好きなニャル様なら、『ノゾ=キマの正体を教えて』という願いに対し『この電話番号にかければ会えるよ。ただし、対価は寿命の半分ね。信じるか信じないかはあなた次第』くらいのことは言いそうだ……)


 『ゆえに真実かもしれない』と思った反面、

 センは、


(ただ『一見、合理にかなっているっぽい』からこそ、逆に『嘘くせぇ』って捉え方もできなくはねぇ)


 と、心の中で、ごちゃごちゃ、めんどくさい思案をしてから、


「――それは、エイボンの書を使って、召喚したのか?」


「……その前に質問。ツミカさんがエイボンの書を持っていると、なぜ知っているのかにゃ? 『未来からきた』というだけだと理由にはなっていないにゃ」


「お前自身の口から聞いた。経緯は単純。お前が召喚した『ウムル』って神話生物に殺されかけたから。その時の流れで、お前が自分で吐いた。流れの『詳しい説明』はさせるなよ。俺にストーリーテラーの才能はない」


「……ほむほむ……」


「で? 俺の質問に対する返答は?」


「もちろん、エイボンの書を使ったにゃ。それ以外の手段は持っていないからにゃぁ。あと、もう知っているなら、バラしちゃうけど、今夜、ウムルが召喚されちゃうから、対処よろしくにゃ」


「は? キャンセルできねぇのか?」


「もう、確定させちゃったにゃ」


「……うぜぇなぁ……」


 ため息をつきつつ、

 センは、


(こいつにエイボンの書をもたせておいても、ロクなことがねぇ……)


 と判断し、


「ちなみに、エイボンの書は、どこに置いてある?」


 探りを入れてみるが、

 それを察知したのか、

 茶柱は、ニィっと妖艶に微笑んで、


「エイボンの書は、みんなの心の中にあるにゃ」


 などと、

 なんの中身もない言葉を口にした。


(……ダメだな……おそらく、こいつは、絶対に口を割らない……あるいは、『魔導書関連の問題』だから『言わないのではなく言えない』系って可能性もなくはない……)


 彼女の表情から、ソレを確信したセンは、ため息をついて、


「……OK。把握した」


 とつぶやいてから、

 コーヒーをすすり、


「最後に一つ質問だ。コレにだけはガチでこたえろ」


「質問の内容しだいだにゃぁ」


「薬宮トコに、呪いをかけたか?」


「……?」


「あいつに、アウターゴッド召喚の呪いを……かけていないのか?」


「意味がわからないにゃ。なんで、ツミカさんが、トコてぃんに、呪いをかけなきゃいけないのにゃ?」


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