38話 巷(ちまた)をにぎわしているS級GOO。

 38話 巷(ちまた)をにぎわしているS級GOO。


「あらためていうが……俺を殺そうとしたんだから、殺されても文句は言うなよ」


 センは、フラットな表情で、


「俺はどこかのサ〇ヤ人みたいに、『自分より弱い相手は、極悪な存在でも殺さない』なんていう、あぶない思想は持ち合わせていない。極悪なゴミや、公害なカスは、普通に殺す。俺は善人でも聖人でもない。ただの平均的常識人だ」


 などと供述していると、

 そこで、



『――ナビゲーション・グールの撃破を確認。転移のワナを発動します』



 奇妙な声が、

 センの頭の中で響く。


 同時に発動する無慈悲なワナ。


 キュインキュインと耳を刺すような音が鳴り響き、地面に奇怪なジオメトリが広がった。


 そのジオメトリに対し、

 センは、


「魔陣一閃」


 見事な横一文字を放った。

 結果、ジオメトリは、

 バリィンッッ!

 と、豪快な音をたてて炸裂する。


「今の俺に、カスみたいなワナが通じると思うなよ。『伊達に地獄は見てねぇぜ』と言いたい」


 と吐き捨ててから、


「さて……それじゃあ、ロイガーが暴れるまで待機するか……」






 ★






「――イヤなもんをイヤやっていうてるだけじゃ、くそったれ! あいつらを殺されるんはイヤなんじゃ、カス、ごらぁ! おどれごときチ〇カスの成りそこないは、宇宙一の美少女であるあたしのお願いを、黙って聞いとけばええんじゃ、あほんだらぁ! どうじゃい! 実にワガママお嬢様らしいやろう! 悪役令嬢感がエゲつないやろがい! これで、満足か! ブタ野郎!」


「非常に不愉快」


 ロイガーはそう言うと、

 トコから視線をそらしつつ、

 トコに対し、


「今から、貴様以外を全員殺す。徹底的に痛めつけて、ふみにじる。そのあとで、貴様を殺す」


 そう宣言すると、


 ――一般人『南雲ナオ』を指さし、


「まずは、あそこにいる『カス』から殺す」


 その悪逆非道な殺戮宣言に対し、

 トコは顔を真っ青にした。


 どうにかして止めようと頭を回すが、

 しかし、トコの実力ではどうしようもない。


 深い絶望に包まれた、

 その時だった。




「――なかなか、クールな悪役ぶりだな。しかし、コクとホップが足りない」




 どこからともかく、

 『その男』は現れた。


 仮面をかぶった中肉中背の黒髪。

 どうやら、ボイスチェンジャーを使っているらしく、

 奇妙なガサガサ声をしており、元の声は一切不明。


 『際立った特徴』がないので、

 『誰であるか』を特定するのは難しい。

 というか、不可能。


 ――その仮面男は、

 ロイガーに対し、ビシっと指をさし、


「俺が誰だか知りたくてたまらない……そんな顔をしているな、ロイガー」


「いや、別に――」


「そこまで言うなら教えてやろう!」


 仮面男は、ロイガーの言葉をさえぎって、


「俺の名は、『ノゾ=キマ』! あのハスターと互角の実力を持つS級GOOである!」


「……ノゾ=キマ? ……聞いたことがないが?」


「今、巷をにぎわしている『この俺』を知らない? はっ、もしかして、あれか? 『有名人を知らない俺かっこいい』みたいなノリのクソマウントか? だとしたら滑稽だと言わざるをえない!」


「いや、そういうのではなく、普通に知らないのだが――」

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