37話 このモンスター童貞は強すぎる。

 37話 このモンスター童貞は強すぎる。


 『理想の出会い』と『理想の恋愛』を妄想している、きわめて一般的な童貞。

 それが、センエース。


 ――センは『一生、独り身・童貞でいたい』というわけではない。

 彼は『孤高』を望んでいるのが、

 『恋愛を拒絶している』というわけではない。


 K5の事は普通に気になっている。

 『いい感じ』に仲良くなれるのであれば、

 それは、センとしても望むところ。


(ただ、この面倒事を処理しつくした後で、あいつらと接点とかあるかなぁ……んー、まあ、現状、何も見えてはいないけど、なんかしらが繋がって、良い感じになれる可能性もゼロではないだろう……うん、たぶん……)


 と、センは、『モンスター童貞』が陥りがちな、

 自分の恋愛が『何かしら』でうまくいくだろう、

 という、雑な未来予想図をたててしまっている。


 これが危うい。

 この思想は、未来につながらない。

 この思想でいる間、恋愛がうまくいくことはありえない。


 この思想を貫いた場合、悲劇が待っている。


 具体的に言うと、『200億1万年経っても童貞』という悲劇である。


 しかし、そんな事実に、彼は気づけない!

 彼は、もしかしたら『命の王』たりうる器の持ち主かもしれないが、

 しかし、恋愛関連においては、

 どうしようもないほど歪な『究極超モンスター童貞』でしかない!


 ――と、そこで、


(……お、いたいた)


 前方に、動く物体を見つけて、

 注視してみると、

 それは、『奇妙な化け物』だった。


 二本足で立つ『酸で溶けた犬』のゾンビのような化け物。


(特に変化は見られない……前回と同じだ……)


 観察しつつ、心の中で、そうつぶやいていると、

 その化け物は、センの方に、

 ギロっと視線を向けて、

 3秒ほどセンの全身を観察してから、


「かかか……ひどいな、貴様」


 前回と同じく、


「人間が『脆弱な種』であることは重々理解しているが……しかし、その中でも、貴様は、とびぬけて酷い……ここまでスカスカな肉体を見たのは初めてだ。貴様の生命レベルは、生まれたばかりの赤ん坊と比べても大差ない」


 などと、そんな事を口にするナビゲーション・グールに、

 センは、


「……お前、今が2周目って自覚あるか?」


 そう問いかけた。


「……? 何を言っている?」


「俺は3日後の未来からタイムリープしてきた。俺ともう一人以外に『その記憶を持つ人間』はいない。てめぇら神話生物はどうだ? 今が2周目って感覚は持っているか?」


「……どうやら、頭がおかしいらしいな。というより、私の狂気にあてられて発狂しているのか」


「……その反応……どうやら神話生物側も、記憶は失っているようだな」


 そうつぶやいてから、

 センは、右手に図虚空を召喚し、

 そのまま、

 音速で、

 ナビゲーション・グールの首をスパンと切断した。



「……ぺ?」



 何が起こったかわからないという顔をしているナビゲーション・グール。

 センは、地面に落ちたナビゲーション・グールの頭を、

 グシャっと踏みつぶす。


「あらためていうが……俺を殺そうとしたんだから、殺されても文句は言うなよ」


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