31話 違和感。

 31話 違和感。


「さっさと質問に答えてくれ。このクラスに、お前の友達は何人いる?」


「……友達ねぇ……そんなにいないけど……んー、まあ、田中は友達かなぁ。正直、微妙だけど……一応、中学が同じだし。塾も一緒だったし」


 そう言いながら、窓際の席に腰かけているメガネの男子を指さす反町。


「そうか、わかった」


 そう言うと、センは、田中の席に向かって歩き、


「田中。質問だ。お前は、反町と友達か?」


「……へ?」


 またもや、当然のように疑問声を受けるセン。

 もろもろ、理由をでっちあげて、なんとか会話ができる状態にもっていくと、


「――まあ、友達なんじゃない? 中学の時、選択系の授業で、けっこう一緒だったし、家に遊びにいったことも、中2の時に、一回あるし……」


 その発言を受けて、

 センは、


(……『過去にわたっての他者との関係性』が普通に存在している……『反町の人間関係』の『不完全性』から、この状況に対して、何かしらの答えを刻むのは、厳しそうか……)


 そうつぶやいてから、

 田中に、


「ちなみに、『蓮手』って名前に聞き憶えはあるか?」


 そう問いかけると、田中は、


「……あるっちゃあるけど……逆に、なんで、『俺が、その名前を知っている』って思ったのかを聞きたいところだね。俺と、お前、話したことないよな……」


「……奇妙な言い回しだな……」


 そうつぶやいてから、

 センは、


「ちょっと整理しよう……まず、前提。田中、お前は『蓮手』の何を知っている? お前にとって『蓮手』はなんだ? クラスメイトか? 友人か?」


「今、読んでいる小説の主人公」


「……ほう」


「……『なろう』の小説で、今朝、投稿されたばかりの短編。その主人公の名前が『蓮手』。閃、お前が言っているのは、この『蓮手』のこと? もし、違うんなら、エグい偶然だな」


「ちなみに、それはどういう物語だ?」


「高校生に化けたハスターが、何食わぬ顔で高校生活を過ごすって話」


「……ちなみに、それは、最後、どうなる?」


「世界中の人間を殺して、世界を終わらせる」


「ふむ。で? その先は?」


「そこで終わり」


「……ふぅん……なるほど。非常に興味深い物語だな」


「そうか? 俺はクソつまんねぇと思ったけど」


「じゃあ、なんで、そんなものを最後まで読んだんだ?」


「そういえば、なんでだろうねぇ……」


 などと話していると、

 そこで、


 ――『聞き逃せない会話』が、センの耳に届いた。


「――罪華さん、そろそろ始業ベルがなりますよぉ。起きてくださぁい」


「ほっとけ、ほっとけ。またオバセンにシバかれたらええねん」



 そんな、黒木とトコの会話を耳にしたセンは、

 心の中で、


(……オバ……? アゲじゃなく?)


 などと、思案している間、

 つい、無意識のうちに、

 センの視線は、彼女たちを追ってしまっていた。


 その視線の動きを察した田中が、


「K5が気になる気持ちはよぉく分かるけど、あまり、ジロジロ見ていると、『親衛隊』の連中に拉致られて、コンクリ詰めにされるぞ」


 と、助言を投げかけてきた。

 その発言を受けて、センは、


「……親衛隊というか、ただのヤクザだな」


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