28日 まだ、死んでやらねぇ。

 28日 まだ、死んでやらねぇ。


「……お前は死ぬ……というか……いいかげん、死んどけ……もういいだろ……」


「(ダ)……心臓なら……移植すればいい……大した話じゃねぇ……普通の人間にも可能な『ただの医療』だ……」


 そう言いながら、

 センは、よろめきながらも、どうにか、蓮手の元へと近づいていく。


 その様子を横目に、蓮手は、


「おいおい……マジで、お前……頭イってんな……」


「(ダ)頭おかしくなきゃ……今、ここに立ってねぇ……」


 そう言いながら、センは、奥歯をかみしめ、


「(ダ)まだ死なねぇ……死んでやらねぇ……」


 そうつぶやきながら、

 センは、蓮手の胸部に腕を突っ込む。


「ぐはぁああっ!」


「(ダ)動くんじゃねぇ……心臓が……抜き取り……辛いだろうが……」


「……サイコ……野郎……」


「(ダ)いまさらだな……………もらうぜ、お前の心臓……」


 ブチっと、大血管を引きちぎり、

 蓮手の心臓を奪い取るセン。


 ドクドクと、手の中で脈を打っている。


 心臓を抜き取られたことで、

 蓮手は、完全に絶命した。


 蓮手の死体に背を向けて、

 センは、

 脈打つ心臓を見つめつつ、


(……さて、どうやろうかなぁ……)


 自分の心臓との交換方法に悩んでいた。

 ここに関しては、あきらめないとかどうとかの話ではなく、

 単純に『どうしたもんだろうか』と悩み、

 立ちつくしてしまっている。


(魔力で接着は……できなくもない……俺の心臓をぶち抜いて……即座に、つなぎあわせれば……いや、いけるかなぁ……)


 朦朧とした意識の中で、

 センが、必死に、どうしたものかと悩んでいると、

 そこで、


(……ん?)


 センの手の中で脈打つ心臓が、

 パァアっと発光しだした。



(なんだ、なんだ……)



 不思議に思っていると、

 蓮手の心臓は、カギの形状へと変化していく。


 発光は2秒ほどで収まり、

 『銀色のカギ』が、センの手の中には残った。


(……移植しようと思った心臓が……銀色のカギになりました……もう、意味がわからないよ……)


 心の中でつぶやきながら、

 センは、その場に崩れ落ちる。


 血が足りなさすぎて、

 もはや、意識を保つことが難しい。


(死ぬ……)


 頭の中で、死がよぎる。

 すると、グググっと、芯が熱くなって、


(まだだ……まだ死んでやらねぇ……なにか……考えろ……)


 この状況で、センは、まだあらがう。

 センエースは、どんな状況でも、センエースでありつづける。


(ヤバい……なんとかしないと……心臓を……どこか……心臓……)


 心臓を求めてさまようバケモノとなったセン。


 そんなセンの耳に、

 足音が聞こえた。


 ザッ、ザッ、ザッと、

 次第に大きくなっていく足音。


(……近づいて……きている……誰だ……生き残り……それとも……また別のGOO……)


 センは、這いずりながら、

 どうにか、足音がする方に、視線を向けた。


 すると、そこには、


「その状況で、まだ目が死んでいない……感嘆するよ、センエース」



(……挙茂(あげも)……)



 担任教師のアゲセンが、

 ドン引きの表情で、センを見下ろしていた。


「ここまでくると、さすがに認めざるをえないな。センエース、お前がナンバーワンだ」


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