19話 ロックオン全人類。

 19話 ロックオン全人類。


「我々を導けるのは、あなたしかいない。他の者では絶対に不可能です」


 正義(まさよし)は、センに反論を許さない勢いで、

 たたみかけていく。


「もし、仮に、王たりうる者がいたのであれば、今日までの永き日のどこかで、すでに、そのものが王として君臨していたでしょう。しかし、そんな者はいない。ここにいる者は、みな、例外なく優秀ですが、しかし、『命の王』にはなりえない。それほどの高みに立てるのは、本物の器を持つ者のみ」


「……」


「ご決断を、陛下」


 詰めてくる正義(まさよし)に、

 センは、


「俺は王にはならない」


「……なぜ?」


「いやだから」


「……」


「俺の『イヤ』をナメるなよ。天地がひっくり返っても、俺は自分の意見を変えない。俺のガンコさはハンパじゃ――」


 と、言い切る直前、

 紅院正義のスマホが鳴った。


 その軽快なリズムは、まるで、

 『はやく出ろ』とせきたてているよう。


 間を乱されて、普通に不機嫌になるセン。

 とはいえ、この手の不機嫌を他者にぶつけるようなパワハラは嫌いなので、

 極力、その感情は表に出さず、


「出ろよ」


「よろしいのですか?」


「あんたの立場だったら、やばい緊急連絡の場合とかもあるだろ?」


「感謝します」


 そう言いながら、正義(まさよし)は、かけてきた相手の名前を確認する。


「……娘からですね」


「……なんかあった可能性もなくはないな……」


「面倒は勘弁してもらいたいところですが……」


 などと言いながら、正義(まさよし)は電話に出た。



「どうした、ミレー」



 声をかけると、

 電話の向こうから、






『――ロックオン、ヒューマニティ・オール――』






「ん? 誰だ、貴様。なぜ、娘のスマホを――」


 聞き馴染みのない『男』の声がして動揺する正義(まさよし)。

 声の主は、正義(まさよし)の問いに応える気は毛頭ないようで、




『――舞い踊れ。幻爆の剣翼』




 そう宣言された直後、

 正義(まさよし)の首が、

 スパァンッッ!!

 と、切断された。


 同時に、首から離れた頭部が、

 『秘孔をつかれたモヒカン』みたいにグニャリとゆがみ、

 ドォンッッ!!

 と小規模の爆発を起こす。


 そのあまりにもスプラッターが過ぎる映像に、

 さすがのゾーヤも青くなったが、

 悲鳴をあげるよりも前に、

 彼女の首も、

 スパァンッッ!!

 と、切断されてしまった。

 正義と同じく、両断された頭部は、小規模の爆発を起こす。


 次々と、

 その場にいる全員の首がスパパパパパッッ、と切断されては、

 直後に小規模の爆発が連鎖する。


 『センに利き腕を切られた時』とは違い、

 当然のように、血が噴き出して、

 あたり一面が血の海になっていく。


 爆発で飛び散った肉と血が周囲の壁を猟奇的に彩(いろど)る。



 ――一瞬、何が何だかわからないという顔をしていたセンだったが、



(見えない剣……属性は幻影と切断、狙いは首、ルーンは爆発……『命』を『間違いなく殺そう』としている……逃亡も延命も許さない、絶対的な殺意)



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