4話 緊張感、大事に!

 4話 緊張感、大事に!


「紅院・薬宮・黒木・茶柱の四名は、占拠されると同時、テロリストによって隔離される。紅院、お前たちの『特別扱い』について、何か意見があるなら聞くぞ」


「……別に何もないわ。実戦を想定するなら、むしろ、私たちが、他の面々と同等に扱われる方がおかしいし」


 紅院と挙茂の会話を聞いて、センは、心の中で、


(まあ、仮に、この学校が占拠された場合、テロリストの目的は、99%以上の確率でK5だろうからなぁ)


 などとつぶやきつつ、

 後ろの席の蓮手に、


「仮に、ガチテロがおきた場合、親衛隊連中はどうするのかね?」


 と、尋ねると、


「親衛隊は、あくまでも、『日常生活における障害の排除』が仕事だから、ガチのテロリストが相手だと、俺らと同じで、避難に徹するはずだ。ここは、ド〇ゴンボールの世界じゃねぇから、いくら空手や柔道の達人であっても、拳銃の相手は出来ねぇ」


 『チャカを振り回すチンピラ』程度なら、ギリギリ対応できなくもないが、

 『マシンガンで武装したプロフェッショナル』の相手は流石にキツい。


「ガチにはガチをぶつけるのが流儀。テロリストの相手は、学生ではなく、ゴリゴリのプロが担当する」


「つまり、俺らは、『ゴリゴリのプロが助けにくるのを待つだけの簡単なお仕事』をすることになるわけか」


「テロリスト側も、K5に『ガチ護衛』がついていることは、当然、想定しているだろうから、仮にテロが実行された場合、敵の練度と装備品は、なかなかのものになると予想される。つまり、俺らがヒーローをやるスキなんて一ミリもねぇって話だ。というわけで、閃。別に、お前の冗談を信じているわけじゃないが、一応、警告しておく。……マジで、余計なことはするなよ」


「信じていないなら、警告する必要ねぇだろ」


 と、そこで、

 挙茂の携帯のアラームが鳴った。

 挙茂は、サっと時間を確認してから、


「全員、窓から離れて、こちらの壁際にくるように。急いで。ダラダラしない」


 その指示に従い、

 全員が、入り口側の壁付近に寄る。


 その数秒後、

 ガシャーンっと、ガラスの割れる音がクラス内に響き渡った。


 窓ガラスをブチ破って『ダイナミックお邪魔します』をかましてきたのは、

 『中東の民兵』っぽい恰好をした『いかにもなテロリスト風の男』たち。


 その数は3名。

 3人とも、それなりにシッカリとしたガタイをしており、

 重厚なマシンガンを装備している。


「この学校は、我々『時空ヶ丘の旅団』が占拠した。全員、おとなしく言うことを聞け」


 このクリティカルな状況を尻目に、

 センは、蓮手に、


「あのテロリストさん達って、もしかしてウチの教師?」


「いや、犯人役は外部に委託したらしい。たぶん、役者じゃねぇかな。もしくは、警察の関係者か」


 などとおしゃべりしていると、

 アゲセンが、


「そこ、静かに。今、この教室はテロリストに占拠されているんだぞ! ちゃんと、緊張感をもって!」


 と、教師らしく注意してきた。


 その発言に対し、センは、心の中で、


(……この茶番に緊張感をもって挑むのは、さすがに、無理があると思うが……)

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