89話 問題解決までの軌跡。

 89話 問題解決までの軌跡。


(アウターゴッドが召喚されるのは流石にヤベぇ……いくらなんでも勝てねぇだろ……)


 三等のセンでも、『アウターゴッドがヤバい』という知識はある。


 『神話生物が実際に存在する』という事実は、

 300人委員会の関係者しか知らないが、


 『クトゥルフ関連』の『神話』なら、

 一般人でも耳にすることはある。


 ――『クトゥルフ関連の神話を知っている者』なら、

 誰だって知っている。

 GOOならば、まだ、『常識が通じる質量』の範疇に収まるが、

 『アウターゴッド』には、一切の常識が通じない。


(絶対に召喚を阻止しないとヤバい。……だが、紅院が死ぬ以外に、何か方法があるか? ウボの召喚に関する『そもそものルート』が分からねぇから、逆算で解除も厳しい。つぅか、『そもそも』を言い出したら、『召喚のシステム』からして意味不明)


 問題解決の際に、『根本』を追求しすぎると沼にハマってしまう。


 大事なことはいつだって、

 『どこまで』を境界線とするかの線引き。


(どうすれば止められる? 何か情報……魔導書でもあれば……そういえば、茶柱が、何か持っているっぽいんだよな……今から、あいつに連絡して……つぅか、どうやって連絡する? 入るのはギリギリ出来たけど、外に出る方法がわからねぇ。必死でこじあけた穴は、今、普通に閉じているし……)


 と、そこで、センは、紅院に視線を向けて、


「ここから出る方法、知っているか?」


 有無を言わさぬ真剣な目で問われて、

 紅院は、思わず、反射的に、


「……えっと……ツァールが死んだら解除されるって聞いたけど」


「ツァールってのは、さっきのGOOだな。……とっくに殺したけど、まだ解除されていない……『時間の問題』か、もしくは、『その情報が嘘だった』か……とにかく、脱出方法は不明……」


 そこで、さらに頭をまわし、


「携帯ドラゴンを使って、外と連絡は?」


「出来ない。最初にやってみたけど、無理」


「今は? ツァールが死んで以降は、おそらくやっていないだろ?」


「……」


 うながされて、紅院は、

 携帯ドラゴンを召喚し、

 トコと連絡を取ってみようとする。


 かなり消耗した今でも、そのぐらいはできる……はずだが、


「通じない……」


「OK。理解した。他の方法を探す」


 センは、すぐさま切り替えて、

 次の手を考えようとする。


(のこり5分ぐらい……どうする……どうする……考えろ……考えろ……)


 必死に頭をまわしながら、

 その場で、グルグルと歩き回る奇行を魅せるセン。


 そんなセンに、


「……ありがとう」


 紅院は、素直に礼を言った。


「はぁ? なにが?」



「私を守るために、必死になってくれて……ありがとう」



「アホか。俺のためだ。アウターゴッドが召喚されたら、さすがに俺もヤベぇ。どうにかする方法を考えるのは当たり前」


「私を殺せば、問題は解決する」


「それは、解決したとは言わねぇ。問題を放棄しただけだ」


「かもしれない!! けど!! 世界は救われるでしょ!!! 言うまでもないことを言わせないでよ!!!」


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