54話 くだらない言い訳。
54話 くだらない言い訳。
「何度も言わせるな。事実を言っているんだ。ありのままの事実を並べるのに、知った風もクソもねぇ」
そんなセンの発言に、
城西は、怪訝な顔で、
「一つ聞きたいんだが……閃、お前は、彼女の何がよくて付き合っているんだ?」
「どこもいいとは思っちゃいねぇよ。確かに、顔の出来はいいが、俺の『好み』のドストライクかと言えば、別にそうでもねぇし」
そうつぶやきつつ、
センは、自分の胸倉から、
城西の手をひっぺがし、
「ハッキリ言うが、俺は、あいつのラリっているところが嫌いだ。言っておくが、アレ、演技じゃねぇぞ。六割くらい、マジだからな。あのイラつく喋り方は、むしろ『マシな4割』の部分で、本筋の『やべぇ6割』を隠すためのフェイントに過ぎない」
センは、壊れたダムみたいに、
ごうごうと、
「あいつは、根本的に壊れているんだ。俺も、似た部分があるから、よくわかる。だからこそ、同族嫌悪が爆発して、一緒にいると、常にイライラする」
茶柱に対する罵詈雑言が止まらない。
「常時、ニタニタしているのも、普通に腹がたつ。俺はプライドが高いんでね。小バカにされるのは大っ嫌いなんだ。だが、あいつは、常時、俺を小バカにしてくる。まさに水と油。まったくもってあわねぇ」
止まらないセンの言葉を、
城西は黙って聞いている。
センは続けて、
「腹黒いところが、普通にキモい。頭が良すぎるところや、才能スペックが高いところも、普通に腹がたつ。俺は才能のあるヤツが嫌いなんだ。自分が無能だからな。あいつの隣にいたら、嫉妬心がザワザワしてしんどいんだよ」
茶柱に対する文句が止まらないセンに対し、
城西は、
「――閃、質問に答えろ。なぜ、それほど嫌っている相手と、お前は付き合っている?」
まっすぐに質問をされたことで、
センは、ようやく押し黙る。
頭の中で、
(わかんねぇよ……)
吐き捨てる。
自分の感情を言葉で整えることが難しい。
茶柱のダメな所なら、
一晩中でも語り続けることができるのだが、
(何も嘘じゃねぇ……俺が茶柱に対して思っていること、城西に言ったことは全部事実、全部、本音……だけど……)
『茶柱の事が気になっている理由』を、
明確な言葉にすることは、
おそろしいほど難しかった。
「俺のタイプは……いわゆる大和撫子だ……おしとやかで、清楚で、優しくて、つつましい……普通のいい女が、好きだ……そのはずだ……たぶん……」
茶柱は違う。
正反対と言っていい。
「だから、あいつはありえねぇ……」
本音を口にする。
事実を口にする。
真実を口にする。
――けれど、
(それでも、守りたいと思った……理由なんか知るか……ウムルと対面した『あの瀬戸際』で、俺は、あいつを守ることしか考えていなかった……)
あの瞬間のセンは、沸騰していた。
茶柱罪華の全てを守ることだけを考えて、
現場に対して没頭していた。
(きっと、取り繕うと思えば、色々な言葉で、装飾することはできる……けど、その行動に何の意味があるってんだ。所詮は、全部、ただの後付け。くだらない言い訳でしかない)
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