13話 フーダニット。

 13話 フーダニット。


「足が凝ったにゃぁ。誰か、ナメてくれる人はいないかなぁ」


 などと言いつつ、メギドをビデオカメラ化させて、

 しっかりと撮影準備をする。


「これ以上、証拠を増やして、どうしたいんだっ!」


 ――などと、

 場の収集がつかなくなった、

 その時、


 ブーーン……


 と、奇妙な音が響く。


 そして、地面にバーっと広がるジオメトリ。



「……おいおい、またかよ……」



 センは、ギャグモードから、シリアススタイルへとチェンジして、

 ムーンビーストから奪った槍を構える。


 バチバチっと、電気が走った。

 空気がよどむ。


(おいおい……これ、明らかに、ザコが召喚される雰囲気じゃねぇなぁ……)


 場の雰囲気に、センが、軽く引いていると、

 ジオメトリの向こうから、


「……ぷはぁ」


 現れたのは、

 『金のヴェールを纏ったような男』の異形。


 『彼』は、すぅと深く息を吸い込むと、

 二秒ほどかけて、はぁあ、と吐いてから、

 スっと目を開ける。

 その奇怪な目で、ジっと、センを見つめ、


「ごきげんよう、私はウムル=ラト。偉大なる神に仕える者。得意技は時空操作。よろしく、どうぞ」


 などと、挨拶をかましてきた。


 その雰囲気から、




(……ぅぅうーわっ……こいつ、やっば……)




 『別格の覇気』を感じ取ったセンは、

 茶柱に視線を向けて、


「おい、逃げろ。エグい、エグい。アレはエグい。ロイガーが、ゴミに思える、ケタ違いの化け物だ」


「え? そうかにゃぁ? なんだか、ヒョロガリっぽくて、弱そうだけどにゃぁ」


「いや、ロイガーも、そこそこヒョロかったって……いや、そんな事言っている場合じゃねぇんだよ。さっさと――」


 と、そこで、

 ウムルが、




「――おしゃべりしているところ悪いが、一つ、質問させてもらっていいかな?」




 脳にキンと響く声で、そう言った。

 センは、鉛管を曲げるように、

 ギギギっと体を動かしつつ、


「え、あ、はい……なんでしょう?」


 丁重な態度で、そう尋ねると、

 ウムルは、茶柱に視線を向けつつ、


「私を召喚したのは、彼女で間違いないかな?」


 などと言われて、

 センは、小首をかしげ、


「は? いや、召喚したのはこいつじゃないと思うが……」


「? ……いや、そんなはずはないだろう。私を召喚したのが、高位のシステムと魔力を持つ人間であることは分かって――」


 と、そこで、

 茶柱が、


「ツミカさんが、GOOを呼ぶなんて、そんなことするはずがないにゃ! 酷い言いがかりにゃ! 超位GOOを召喚できるほどの超高位の魔導書をツミカさんが隠し持っているだなんて! そんなはずがないにゃ! 決めつけでかかるのも、大概にしてほしいにゃ! ムーンビーストを使った儀式召喚なんて、絶対、絶対、するわけないにゃ! これは冤罪にゃ! 訴訟も辞さない構えにゃ!」


 と、まくしたてたことで、

 センは、


「うぉおい……てめぇ、何してくれてんだ?! 頭がおかしいというのは、最初から分かっていたが、まさか、そっち方向でもヤバいヤツだとは思っていなかったから、マジで、今、普通に、ドン引きしているぞっっ!! あんな『クッソ化け物』を、わざわざ、自分から召喚するとか、お前、ほんと、頭、どうなってんだ?!!」

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