77話 悟り世代の権化。

 77話 悟り世代の権化。


「施(ほどこ)しを受けたいとは思わない。俺は俺の力で生きていきたい。――『俺は常に孤高』――これはギャグで言ってんじゃねぇ。俺なりの覚悟を端的にまとめた信念の表明。ナメてもらっちゃ困る」


「まあ、その辺の感覚はわからんでもないけどな……あたしも、出来れば、自分の力だけで生きていきたいと思う」


「名誉や地位に関しては、そもそも、興味がねぇ。有名になりたいと思ったことはねぇし、偉ぶりたいわけでもない。むしろ、そんな概念に『縛られたくない』という気持ちの方が強いな。誰もが、俺のことを知っていて、誰もが俺に期待して、誰もが俺に責任を求める……イヤだな。想像するだけでゲロが出る。『学級委員長』は趣味じゃねぇ。図書委員ぐらいがギリだ。一番いいのは『何の役職』にもつかないこと。部活動は帰宅部。それこそが俺のあるべき姿」


「どんだけ、なんもしたないねん」


「何もしたくないんじゃない。『やりたくないこと』は『やりたくない』ってだけの、きわめて単純な話。俺は、俺がやりたいように、好きなように行きたい。自分のケツは自分でふく。友達がいない事で発生する面倒は全て『自分の責任』として受けとめる。そのかわり、友達がいることで発生する『デメリット』や『しがらみ』からは解放される」


「なんというか、悟り世代の権化みたいなやっちゃなぁ」


「ズレた大人がかましそうな勘違いはやめろよ。欲がないわけじゃない。俺にだって、欲しいものは確かにある」


「それはなんや? 言うてくれたら、全力で手に入れたるで」


「そうだな。とりあえず、今、一番欲しいのは、俺の代わりに、お前らのリーダーをやってくれる理想のヒーローだな」


「……仮に、そんなヤツが見つかったとしても、とりま、一応、あんたにも、戦ってほしいと拝み倒すで。人類を守る剣と盾は、何個あっても足りん」


「……強欲だねぇ」


「強欲にもなるわい。こっちは、全人類の命を『託され』とるんや。そう簡単には投げ出せん」


「……託された、ねぇ……それは『300人委員会とやら』から?」


「違う。先輩たちからや。神話生物対策委員会に所属し、骨身を削って闘い、そして、あたしらを守って死んでいった先輩たち」


「……」


「高校入学前のことや。一気に5体ものGOOが召喚されて、『神話生物対策委員会』VS『GOO』の大戦争が起きた。あいつら一体一体は、ロイガーの足元にも及ばんザコやったけど、とにかく、五体という『数』がハンパやなくて、当時、20人近くおった先輩たちは、バッコバコ殺されていった。あたしらは『先輩たちよりも弱かった』けど、先輩たちは『あたしらの方が潜在能力は高いから、将来的には人類のためになる』と、命がけで、あたしらを守ってくれた」


「……」


「あたしらが死んだら、基本、人類は終わりや。GOOの大半は、デフォで、物理に対するエグい耐性を持つ。高位のドリームオーラを使われたら、銃も爆弾もほぼ効かん」


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