40話 センエース的に、『何』がマズい?

 40話 センエース的に、『何』がマズい?


「そのまま目を背けておくように。もし、少しでも、こっちを見ようとしたら、あんたの股間についている球と棒を、正式にひねりつぶすから、覚悟しなさい」


「……」


「返事は?!」


「……了解」


 怒鳴りつけられたことで、言葉を発するようになったセンに、

 紅院は、


「何か言い訳があるなら、トコたちが戻ってくるまでの暇潰しに聞いてあげなくもないわよ?」


「……ありがたいね。じゃあ、一個だけ、いいか?」


「どうぞ」


「……ここは、学校のシャワールームで、今の時刻は夜……だよな? 20時~21時くらいの」


「なにを当たり前のことを――」


「なんで、こんな時間に、お前ら、学校にいるんだ?」


「部活動で遅くなっただけ」


「……お前らって、部活とかしてたっけ? ……聞いたことないんだが……」


「体裁(ていさい)が悪いから黙っていたのよ。ちなみに私たちは『性犯罪者に対する適切な拷問方法』と『正しい殺し方』を研究する部活をしているわ。長年の研究成果を試せる日がくるとは夢にも思っていなかったから、正直、今、ワクワクしているわね」


 猟奇的な声で、そんなことをつぶやく紅院。


「……」


 普通にビビるセンに対し、

 紅院は、

 そこで、


「……あんたと……」


 『過度に猟奇的な声』をおさめて、

 ただただ、純粋に、悲しげに、


「……あんたと話している時、トコは楽しそうだった。放課後に、あの子と話をした時、少しだけ、あんたの話題が出た。その時、あの子は、こう言っていた」


『あの閃壱番ってヤツ、なかなか珍妙なヤツやと思わん? 思考が単純に狂っとるという点以上に、キモのすわり方が人外クラス。あんなヤツはめったにおらんで。まあ、目つきが悪くて、性格が歪んでて、おまえに、だいぶ頭悪そうやけど』


「あの子が、同年代の男を褒めたことなんて、これまで、ただの一度もない。尽力してくれている親衛隊の面々に日頃の感謝を伝えることはあっても、『男としての質』を褒めたことだけは、本当に一度もないんだ。それは、あの子が自分に課しているルールでもあった」


 と、そこで、センが、顔をそむけたまま、


「あの……さっきのセリフの中で、俺、どの辺が褒められてる感じ? 悪口のエレクトリカルパレードでしかなかったような……ぶっちゃけ、今の心境は『あ、俺、裏で悪口言われてたんだぁ。わぁ、けっこうキズつくぅ』みたいな感じなのですが……」


 そんなセンの切り返しに対し、

 紅院は、ガン無視を通すと、

 そのままガン切れの顔で、センを睨み、


「トコは、今まで、いろいろあったせいで、人間不信気味なところがある……」


「……」


「時間をかけて、ゆっくり、ゆっくりと、心を取り戻してきていたのに……」


 ギリギリと奥歯をかみしめて、


「もし、今回の件で、トコが、また心を閉じるようなことになったら……その時、私は、きっと、あんたを殺す。冗談でもハッタリでもなく、普通に殺して山に埋める。私自身が手を下さなくても、頼めば二つ返事でやってくれるスジモノが、私のバックには、腐るほどいる。その事実と現実を頭に刻み込んでおけ。この、出歯亀クソ野郎」


 そこまで聞いた時点で、

 センは、




「……それは、マズいな……」




 と、真剣な声でつぶやいた。


 その発言に、イラっとした紅院は、

 センの背中を、

 ガツンッ、と蹴り上げて、


「マズいだと……な、なんだ、そのナメた発言……ふざけるな……」


 ワナワナと肩を震わせながら、怒りをあらわにして、


「自分の命が危険にならないと、『性犯罪』が『やっていい事か悪い事か』の判断すらつかないのか、このクソボケ」


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