47話 ルナティック・オメガ・トランスフォーム。

 47話 ルナティック・オメガ・トランスフォーム。


「こいつは、いい技だな。名前はダサいが」


「……ダサくなかったら意味がねぇ」


 そう言いながら、

 センは、グっと顎をあげて、


「そんなことより……お前、さっき、俺の異次元砲をどうした?」


「当たったらウザそうだったから消した」


「消したのは見たら分かる。どうやったかを聞いている」


「知らん。昔から、なんかできた」


「……」


「……『何億年単位で毎日、ずっと壁にぶつかり続けると、いつか、壁を抜けることもなくはない』みたいな話を聞いたことがないか?」


「トンネル効果だろ……それが?」


「つまりは、それだ」


「はぁ?」


「そんな露骨なハテナ顔をされても、俺にはもう、これ以上の説明は出来ない。ちなみに、さっきのは、あくまでも例であって、オメガバスティオンの正式な説明ってワケじゃねぇ。ぶっちゃけた話、マジで、俺もよくわかんねぇんだよ」


 そう言いながら、

 オメガは、自分の両手を見つめて、


「サッパリわかんねぇ……が、けれど、間違いなく、これが、俺の『可能性』。俺が背負ってきたものは、お前のソレと比べれば、きっと、ちっぽけで安っぽい。けれど……」


 体積だけで見れば、さほど大きくもない、その両手を、

 オメガはギュと握りしめて、


「……絶対に譲れないもの……必死になって守ってきたもの……」


 オーラが底上げされていく。

 質量が増していく。


「俺の『可能性』を超えろ、センエース。出来ないなら――『託さない』――」


「……」


 無言のまま、

 センは、ゆっくりと、


「すぅ……はぁ……」


 呼吸を整えていく。

 魂が均一化されていく。

 心電図が冷静になる。


 まっすぐに、まっすぐに、

 ブレないよう注意しながら、

 前を見る。


 オメガを見る。


「……『託されたい』なんて思ったことは一度もないし、今だって、一ミリたりとも思っちゃいないが……」


 そう前を置いてから、

 丁寧な一拍を置いて、



「……まあ、でも……」



 そうつぶやくと、

 結論を述べるよりもはやく、

 自分の核に気合を入れる。


 グンと深く、

 シンと穏やかに、




「――『究極超神化6』――」




 宣言すると同時、

 破格に荘厳な光に包まれるセン。


 フォルムは、スピリットプラチナ・フォルテシモ。

 全部で五つあるスタイルの中でも、特に汎用性の高い姿。


 その姿を見たオメガは、


「……大きいな」


 本音をこぼす。

 オメガの目に映るセンは、

 間違いなく大きい。


「しかし、究極超神化6か……なぜ、究極超神化7を使わない?」


「今のところ、その必要性を感じない」


「ふぅん……あ、そう」


 そう言いながら、

 オメガは、

 コキコキっと首をまわしてから、


「じゃあ、これならどうだ?」


 そう前を置いてから、

 天を仰ぎ、


「――ルナティック・オメガ・トランスフォーム、モード-『センエース』――」


 ひどく簡素に、

 切り札を切っていくオメガ。


 扱いは雑でも、スペックは破格。


 おぞましいほどに、

 オメガの核が膨らんだ。



「これが、お前の『可能性』をモチーフにした究極のトランスフォーム。モード-センエース。俺の切り札。――今の俺が、間違いなく、俺史上最強」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る