34話 くたばれ。
34話 くたばれ。
「ちょっと強いからといって……いい気になるな……クズがぁ……」
なんの意味もない、『思考放棄した負け惜しみ』を吐き捨てるクリミア。
そんなクリミアに、
センは、心底、つまらなそうな顔で、
「いい気になっているように見えるか? 本当に? 呆れているようには見えないか? まったく?」
「……」
「お前の資質は、決して悪くない。俺の配下の上位勢と比べても、遜色ないほどの資質。もし、お前が、まともな道を歩んでいて、まっすぐな想いで、ゼノリカに入ることを望んでいた場合、天上に名を連ねることも出来ただろう」
「ゼノ……リカ……?」
「お前は『本物になりうる可能性――全てを掴めたかもしれない未来』を自分で捨てた。『ゼノリカの天上に名を連ねるという人生』が、お前にとって幸福だったかどうかは知らんけど……少なくとも、今みたいに、呆れ怨みツラみに漬かりながら、地獄の底でエンドレスワルツを踊るよりは、なんぼかマシだったろう」
「……」
「すべて、お前の責任だ。他の誰の責任でもない。すべて、お前自身の問題だ」
つらつらと、
そう言葉を並べてから、
センは、
まっすぐに、クリミアの目を見て、
「――反省しろ」
そう言った。
「……」
センの言葉を最後まで聞いたクリミアは、
その全てを飲み込み、咀嚼し、受け入れた上で、
『罪帝クリミア』としての、
最後の意地を通す。
「……くたばれ、クソ偽善野郎……私は絶対に……反省などしない……」
クリミアは、
覚悟を決めた顔で、
そう言った。
「まあ、確かに、俺も結構なクズ野郎だけど、お前よりは、ちょっとだけマシな気がするかな」
センは、そう言った直後、パチンと指をならした。
すると、クリミアは、また禍々しい腕によって、
ブラッディソウルゲートの奥へと引きずり込まれる。
自業自得を積み重ねるクリミア。
センの予想では、
(あの感じだと、まだ、もうちょっとは耐えるかな?)
と、思っていたのだが、
しかし、
結局、
「………………」
――9回目の地獄に耐えることができず、
そのまま灰になってしまった。
「あれ? 終わり? ふーん……さっきの啖呵(たんか)は、『抵抗する覚悟』ではなく『あきらめる覚悟』を決めただけだったか。……最後の最後まで、くそダッセぇなぁ……」
まっすぐな本音をつぶやいてから、
「結局のところは、9周ぽっちかぁ……まあ、ヘタレではないけど、めちゃくちゃ根性があるってほどでもなかったな。10周前後耐えたヤツなら、他にも何人か見たことあるし。つぅか、やっぱり、『あいつ』が異常なだけだな。44周は、さすがにヤバすぎ」
センが、そんなことを、つぶやいている間、
センに呼び出された無数の思念たちは、
『まだまだぜんぜん物足りない』とばかりに、
クリミナの灰を、メッタメタに踏みつけていた。
そんな無駄な時間が、十秒ほど経過したところで、
思念たちは、
センに対して、
全員で、深々と、頭を下げて、
――ありがとうございます――
と、感謝の言葉を投げかけた。
心からの言葉。
想いがあふれた言葉。
「感謝されても困るんだよ。俺は自分が宣言した通り、あのクズに、罪の数え方を教えただけだ。つまり、あくまでも、俺は、俺のルールにのっとっただけ。お前らの魂を救うためにやったワケじゃない。だから、感謝は必要ない」
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