16話 最速タイム。

 16話 最速タイム。


「なんだ、アルキントゥ、お前もか。いったい、いつのまに、狂信者にクラスチェンジしていた?」


「主が、その尊き輝きで、P型を屈服させてからですわ。あの日までは、わたくしも、主を信じておりませんでした。しかし、主は……美しかった。あれほどの輝きを、わたくしは、他に知らない」


「あの日、何があったかは知らんが、『何か』は起こったようだな……いったい、何があった? これまで、何人かに探りはいれてみたが、誰も真実を語らん。全員、口裏を合わせて、神がどうたらしか言わんから、正直な話、気色が悪いこと、この上ない」


「この上なく尊き神が、その果て無き威光で、大いなる敵を砕いた……それだけが全てですわ」


 アルキントゥは、そう言ってから、

 通信の魔法を、『上司』につないだ。



「――アダムさん、アルキントゥです。コスモゾーン・レリックを回収しました。次の指示を」






 ★






 ――アルキントゥからコスモゾーン・レリック回収の連絡を受けたアダム。

 すぐさま、そのことを、センに報告すると、


「はや……アルキントゥチームが出発してから、まだ1時間くらいしか経ってないんですけど。これ、最速タイムじゃね? 俺らが束になって挑んだ時より、確実にはやいよね?」


「あの時は、慎重に事を運びましたし、それなりに長い仕様のダンジョンでした。おそらく、アルキントゥたちが担当したダンジョンは、全ダンジョンの中で、もっとも短いダンジョンだったのでしょう。そうに違いありません」


 と、盲目的な言葉を並べ立てるアダム。


 その横に座っている『ミシャ』が、

 呆れ交じりのため息をこぼしつつ、

 冷静に、小さなセキを一つはさんで、


「アルキントゥチームの前衛には、暴走機関車の異名を持つカンツを配置したので、別段、驚くほどの速度ではないかと。カンツ・ソーヨーシは、層の厚い九華の中でも一・二を争うほど強靭な肉体を持ち、近中遠、全方位を射程圏内としている高速万能アタッカー。圧倒的な戦闘能力を持ち、かつ、猪突猛進・前陣速攻がウリの彼がいれば、『多少強いモンスターが出るだけのダンジョン』など一瞬で攻略できるでしょう」


「ああ、カンツを入れたのか。なるほどなぁ、じゃあ、納得だ。あいつのイカれっぷりは、なかなかハンパないからな」


 過去に、センは、名前と身分を偽って、

 カンツと仕事を共にしたことがある。


 カンツの性格に関しては、

 センも、普通に、

 『めんどくせぇオッサンだなぁ』と思ったものの、

 しかし、カンツの『強さ』と『信念』に関しては、

 かなり高く評価している。


 ちなみに、カンツとセンがタッグを組んで、

 『とある悪』に立ち向かった物語も、

 なかなか、コミカル&痛快で面白いのだが、

 それは、また別のお話。


「いっつも思うんだよね。あいつが異世界大戦の時にいてくれたら、いろいろ楽だったのになぁ、って。たぶん、あいつを前線に出すだけで、戦争は終わっていたと思う。バグとかも、もしかしたら、あいつ一人で、どうにか出来たんじゃねぇかな」


 その言葉に対し、ミシャが、ピリっとした表情になった。


「セン様。それは、さすがに言い過ぎです。カンツは確かに、すさまじい超人ですが、しかし、あの『深き絶望』を超えることが出来る英雄は、過去にも未来にも、セン様ただ一人だけかと存じます」


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