10話 しょうもない概念の擬人化。

 10話 しょうもない概念の擬人化。


「大きいなぁ! 大きいぞ、ニョグタ! 三至以外で、それほどの大きさを見たのは初めてだ! 強いのか?! 強いんだろうなぁ!!」


「――さあ、センエースよ。私の全てを受け止めてくれ」


 ニョグタは、そう言うと、

 迷いなく、

 カンツの懐に飛び込んだ。


 ニョグタは強かった。

 大きかった。


 ――けれど、その領域に至って、なお、


「……全てを賭して……それでも、届かないのか……」


「貴様は強いよ、ニョグタ。間違いなく、べらぼうに強い。だが、ワシの方が、もう一歩、イカれていた。結局のところ、現状は、それだけの話だ」


 カウンターの背負い投げをくらい、

 豪快に血を吐き出すニョグタ。


 ニョグタの攻撃を、カンツは、真正面から受け止めた。

 つまりは、受け流したう上でのカウンターではなく、

 全てを包み込んで、投げ飛ばしたのだ。


「本当に、信じられない強さだ、センエース」


 ニョグタは、しみじみと、


「貴様ならば、あるいは、この世界の真理に触れられるやもしれん……センエースよ、貴様の器は、私に、そう思わせるほど美しい」


 自身の感想を述べていく。


「何度も言わせるな。ワシはセンエースじゃない。そんなしょうもない『概念の擬人化』と、ワシを一緒にするな」


 そんなカンツの言葉を受けて、

 とうとう、

 ニョグタの『中』にいる者に、

 『限界』がきた。



「……その発言は看過できないな、カンツ・ソーヨーシ」



 九華十傑の第七席ディマイズ・マリスは、

 『その瞬間まで自分の肉体を支配していたニョグタ』を、

 秒で、自身の『奥』へと、引きずりおろすと、

 怒りをあらわに、


「……ニョグタ、貴様もいい加減にしろ。私の主をナメるな。カンツは確かに、とんでもない超人だが、しかし、私の主は、そんな領域にとどまっていない」


 『奥』に封じ込められたニョグタに向かって、

 たんたんと説教をかましていく。


「……愚か極まりない貴様に、主の偉大さを少しだけ教えてやる。私の中で、黙ってみていろ」


 力強く、そう宣言すると、

 マリスは、カンツに、意識と視線を向けて、


「……主を信じるか信じないかは、当人の自由。そこに文句を言う気はさらさらない。しかし、尊き主を『しょうもない概念の擬人化』などと揶揄されていながら、黙っていることは、さすがにできない」


「がははは! だったらどうする? 言っておくが、ワシは、何を言われようと、自分の意見を変えることはないぞ! ワシの頑固さは、ハンパじゃないからなぁ!」


「……知っている。あなたの強情さは、ゼノリカでもトップクラス。だから、話し合いで、現状をどうこうする気は微塵もない」


「つまり?」


「つまりは……」


 そうつぶやきながら、

 マリスは、魔力とオーラを練り上げていく。


 その様を見て、カンツは、


「がはははははは! 本気だな、マリス!」


 豪快に笑ってから、


「ふんっっ!!」


 自身も、魔力とオーラを解放する。


 先ほどまでとは、まったく質の違う輝きに包まれるカンツ。


 豪快な魔力とオーラに包まれる二人を見て、

 それまで静観していたアルキントゥが、


「――『コスモゾーン・レリックのスペックを確認する模擬戦』ならともかく、九華同士での、本気の殺し合いなど、許容できるはずがないのですが?」


 そう言って、両者の間に割って入る。

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