3話 よっ! この墓荒らし!

 3話 よっ! この墓荒らし!


「厳しいダンジョンだと聞いていたが……そして、実際に、ハンパではないモンスターが無数に出てくるが、しかし、しょせんは、ワシ一人でも十分な難易度だったな。がはははははは!」


 豪快に高笑いを決めこむカンツに対し、

 アルキントゥが、


「そうですわね……一応、わたくしも補助魔法をかけたりしておりましたが、別に、それがなかったからといって、特に大きな変化があったとも思えませんわ」


 その後ろにいるマリスも、


「……私にいたっては、後ろからついてきただけだしな」


 ボソっとそうつぶやく。


 暴走機関車と化したカンツの後ろについていき、

 たまに『死に損なっているモンスター』に、

 軽くトドメをさしていただけ。


「それで? もう、最奥のようだが? ここからどうするのだ?」


「コスモゾーン・レリックが隠されているはずですので、探索してみましょう」


 アルキントゥの発言を受けて、

 マリスが、


「……ようやく、仕事らしい仕事ができる」


 そう言いながら、パキパキっと、指の関節を鳴らした。


 最奥のフロアは広く、

 それなりに複雑な造りになっていたので、

 探索のやり甲斐はあった。


 ――このフロアには、隠し扉がある。


 常人であれば、最低でも数時間、

 長いと、数日がかかる仕掛けに守られていた、


 ――のだが、



「……隠し部屋発見」



 暗殺者・盗賊・密偵・忍者など、

 無数の職業をマスターしているマリスの前では、

 どれだけ巧妙に隠されていようと裸同然。


 ほんの数秒で看破されてしまった。


「さすが、マリス! 遺跡を荒らさせたら、右に出る者はいないな! よっ! この墓荒らし! がはははははは!」


「……」


 渋い顔をしているマリスの横で、

 豪快に笑っているカンツ。


 元・長強と、元・UV1。

 基本的に相性が悪い二人で、

 実際、マリスの側からすれば、カンツは苦手な相手だが、


 カンツの側は、マリスに対して苦手意識はまったくない。


 ※ ちなみに、カンツも、ドナと同じく、

   現場に重きをおいたタイプで、

   かつ、かなりの古株に入る。


「――お、いい感じの宝箱だな!」


 隠し部屋の奥には、

 豪華な宝箱が一つ、


 無造作に近づいて開けようとするカンツに、

 アルキントゥが、


「ちょ、ちょっと、お待ちください。見た感じ、明らかに、ワナが張られています。まずは、マリスさんに処理をお願いしてから開けた方が安全です」


「がはははは! ワナが張ってあることくらい、もちろん、気付いているぞ! しかし、心配するな! ワシは、なんだかんだ無敵で不死身だ!」


 と、そこで、マリスが、


「……あなたが、意味不明に不死身なのは、もちろん、知っているが、私たちはそうではない。その宝箱のワナが、部屋全体に影響が及ぶタイプという可能性もある」


「がはははは! 心配するな! お前たちなら大丈夫だ! たぶん! 知らんけど!」



「……はぁ」


 マリスは、面倒くさそうにタメ息をついてから、


「……私たちは、あなたと違い、か弱いので、心配せずにはいられない。というわけで、下がっていてくれ。ワナを解除する」

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