2話 暴走機関車。

 2話 暴走機関車。


「かすり傷など、ダメージの内に入らん! もっと、気合の入った攻撃をしてみろ! かゆくもないぞぉお! がはははははぁ!!」


 圧倒的な自動回復力。

 信じられない耐性値。


 ゼノリカが誇る、

 最強クラスのタンク兼アタッカー。


 ――カンツの特急暴走のおかげで、ほんのわずかな時間で、

 最下層付近までやってきたカンツ・アルキントゥ・マリスの三人。


 ほとんど、すべてのモンスターが、

 カンツ一人の手でボコボコにされた。


 マリスとアルキントゥは、

 カンツの暴走でも『ギリギリ死ななかった敵』の後処理をしつつ、

 後ろからカンツにバフをかけるという、

 簡単なお仕事に従事していた。


 別に『最初からこうする予定』だったわけではないが、

 『テンションが上がってしまったカンツ』には、

 基本的に、何を言っても無駄なので、

 『もういいや、任せよう』という流れになって、

 今に至っている。


「おっと、こいつは驚いた。神級のアンデッドか……」


 最下層に到着したカンツたちを待っていたのは、

 不死種の神級モンスター『死羅腑(しらふ)』。

 ドクロ顔にボロボロの黒いローブと、

 いかにも死神然としたモンスターで、

 禍々しいオーラを放っている。

 存在値は500前後と、別格に高い。


 死羅腑は、自分のテリトリーを犯した敵に対し、

 容赦なく、『死の波動』を放つ。

 高水準の『即死』をつきつける、

 かなり厄介なスキル。


 ほかにも、無数の魔法を放ち、

 カンツたちを撃退しようとするが、


「ん? なにかやったか?」


 カンツには一切通用しなかった。

 魔法は確実に直撃しているし、

 スキルの効果範囲にもバッチリ収まっているのだが、

 しかし、

 カンツは、


「ワシを殺したかったら、『三至』級を二人連れてこい! 言っておくが、それでも、ワシを殺せるかどうかは微妙だぞぉお!」


 叫びながら、

 『なんの策もない特攻』をかまし、

 死羅腑の顔面に豪快な右ストレートを入れると、


「おらおらおらぁああ!」


 続けざま、爆裂の連打をおみまいする。


 その流れの中で、


「ん? 小生意気に、ドリームオーラを張りやがったな? しかし、物理特化のシールドにカスタムするとは愚か、愚かぁ! がはははは! 貴様、ワシを物理型だと勘違いしたな? マヌケめ。ワシはな……銃も肉弾戦も得意だが、魔法も大得意なんだよぉお!」


 叫びながら、

 カンツは、右手に魔力を込めて、


「異次元砲ぉおおおお!!」


 バカ火力の異次元砲を放った。

 本人の性格は粗雑だが、

 しかし、魔力の扱い方は繊細そのもの。


 凶悪に優れたマナ変換率。

 ゼノリカ上位の魔力系特化の中でも、

 なかなかいない、きわめて高スペックな魔法適正。


 すべてにおいて、高スペックな天才。

 それが、カンツ・ソーヨーシ。


「がはは! ぬるすぎて、話にならんな!」


 あっさりと神級モンスターを瞬殺してみせたカンツ。

 結局、今のところ、ノーダメージ。


 死羅腑の魔法攻撃は、非常に強力で、

 当然、ダメージを受けたのだが、

 驚異の自動回復力で、すでに、完璧に全快している。


「厳しいダンジョンだと聞いていたが……そして、実際に、ハンパではないモンスターが無数に出てくるが、しかし、しょせんは、ワシ一人でも十分な難易度だったな。がはははははは!」


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