65話 奇特な集団。

 65話 奇特な集団。


「ブラツクーロさんは、ガチンコのおバカさんだから、『その時』がきたら、上からていよく丸め込まれて、いいように使われるでしょう。私たち『ゴキ』は、間違いなく『レアな人材』ですが、五大家の視点だと、所詮は『最悪、切ってもいいコマ』でしかありませんからね」


「なんだか、よくわかんねぇが……お前が、不明瞭な未来にビビっていることだけはよくわかった」


 そう言いながら、アプソロは、

 冷めた目で、どこか遠くを見つめながら、


「ある程度の自由が許されているとはいえ、所詮、俺らは『全宮の兵隊』だ。もし、将来、何か面倒事が起きたとして、その時、上から『出動しろ』と命じられたら動くしかねぇ。この期に及んで、まだ、器用に生きようとしているお前のことを、俺は、正直、『救えねぇバカ野郎』だとしか思えねぇ。ブラツクーロといい勝負だ」


「ブラツクーロさんと同類扱いは納得しかねますね」


 と、前を置いてから、


「まあ、私の事をどう思おうと自由ですが、今回のお願いだけは、素直に聞いてもらいたいですね。私は救えないサイコパス殺人鬼ですが、大事なものがないわけじゃない。できれば、失いたくない」


「大事なもの?」


「私は、ゴキというチームが、けっこう好きなんですよ。『どうしようもない変態』しかいないクソみたいな組織ですけど、さまよって、もがいて、あがいて、ようやくたどり着いた自分の居場所。……出来れば、なくしたくないんですよね。本音を言えば、アプソロさんのことは好きじゃないですが、しかし、できれば、死なないでもらいたいと思っています」


「……俺とは違うな。俺は、ぶっちゃけたところ、全部、どうでもいい。ゴキも、自分の命も、正直、どうでもいい。しょせん、この世は、ただの夢」


 そう言い切ったあとで、

 ボソっと、


「そう思わないと、やってられねぇ」


 絞りだしたような声で、

 そう吐き捨てた。



「アプソロさんがどう思うかは自由ですよ。そこの部分に何か意見をはさむ気はありません。『自分の命を大事にしてほしい』とか『ゴキのことを大事にしてほしい』とか、そんなアホみたいなことを言う気はコレっぽっちもありません」


 そう前を置いてから、


「ただ、私は、ゴキを失いたくないので『地雷を踏む』のはやめてくれ、とお願いしているのです」


「俺じゃなくて、ブラツクーロに言えよ。誰も納得していないとはいえ、現状、ゴキのリーダーはあいつだ」


「もちろん、ブラツクーロさんにも言いますよ。というか、今から言いにいきます」


「言いに行く? もしかして、わざわざ会いにいくのか? 電話でよくね?」


「声だけでは、伝わらないと思いますので、直接、目を見て、伝えてきます。あ、ちなみになんですけど、ルリさんのホームとか知ってます? 最近、引っ越したというのは聞いていたのですが、具体的な住所は知らないんですよねぇ」


「あ? なんで、ルリの住所なんか……ぁ、もしかして、お前、ブラツクーロだけじゃなくて、全員と、会って話すつもりか?」


「ええ、そのつもりです。一応、まずは、ブラツクーロさんに召集をかけてもらうつもりですが、おそらく、三人ぐらいしか集まらないでしょうし、ルリさんは、基本、電話がつながらないので、住所を知っておきたいのです」


「……マジで、全員と話す気だよ、こいつ……奇特なヤツだな、おい」


「皆さんに比べればマシですよ」


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