50話 チャバスチャン。
50話 チャバスチャン。
「チャバくんは、私のこと嫌いだからねぇ。むしろ、私がいることで、変にこじれるかもねぇ、あははぁ」
と、快活に笑うヤマトに対し、
ゲンが、渋い顔で、
「なに、ワロてんねん」
と、心底からの言葉を投げかける。
続けて、
「え、てか、ヤマトさぁ、お前、マジで、嫌われてんの?」
「私は、チャバくんのこと、結構好きなんだけどねぇ。向こうからはソリが合わないって思われていたっぽいんだよねぇ。ま、チャバくんだけじゃなくて、全員から、そう思われていたけどねぇ。てか、ゴキに限らず、そもそも、私とソリが合う人って、なかなかいないからねぇ」
「……だろうな。俺は、お前のこと、別に嫌いじゃないし、お前のことを理解している部類だと思うが、ソリが合うとは思わない」
★
全宮学園を出立して、一時間ほど経過したところで、
ようやく目的地にたどり着いた一行。
(ゴシックホラー感が全開の洋館……マ〇クラで、こんなのあったな……)
街はずれの森を少し奥に進んだところ。
生い茂る木々に囲まれた館は、
昼間の内から、すでに、
ジットリとしたホラー感に包まれていた。
そんな館から少し離れた木々の影に隠れて、
外観の様子をうかがっている途中、
ボーレが、
「で……えーっと、地下にある金庫をこじ開けて、中にあるものを、何でもいいから、テキトーにパクってきたら、ミッション終了だっけ?」
と尋ねられて、
ゲンは、資料を再確認しつつ、
「……みたいだな。なんでもいいから外に持ち出したら、その時点でロケハンとしては終了。本番だと、『学園に無事帰ってくる』って所までが試験みたいだけど、俺たちの場合は、そこから、チャバスチャンと話し合いをするって流れだな」
「……あらためて思うけど、誰が、こんな試験、うけるんだよ。ロケハンしたって、絶対、意味ねぇよ」
「俺もそう思う。ただ、チャバスチャンが留守だった場合、難易度は、そこまで高くないから『運しだいではいけるかも』と思うバカが受ける可能性はなくもないかも」
「話を通すっつってんじゃねぇか。家に忍び込まれますよって言われてんのに、空けとくバカはいねぇだろ」
「ロケハンしたってことは、他の連中には言わないんじゃねぇか? 俺も、去年、龍試を受けたけど、『どんな方法でもいいから、完全院学園に忍びこんで、教員五人を半殺しにしてこい』って簡素な指示を受けただけで、裏側の概要については、一切、教えてもらえなかったぞ。今思えば、あの龍試も、裏では色々と、話が通っていたんだろうな」
「お前、そんなヤバそうな龍試を受けたのかよ……神経、どうなってんだ……」
と、軽く呆れてから、
「……仮に留守だったとしても、ゴキのアジトなんざ、イカついワナだらけに決まってんじゃねぇか。そんな事すら想像できないバカのために、俺がおぜん立てしないといけないと思うと、それこそ情けなくて死にたくなるな」
「――では、殺してさしあげましょうか?」
背後から急に声がして、
ボーレとゲンとケムスとロコの四人は、
反射的に両足に力を込めて、
バッっと、地面を蹴り上げ、
振り返りながら、全力で距離をとる。
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