42話 日頃の行い。

 42話 日頃の行い。


「痛いんですけど」


「俺は、その何万倍も苦しんだんだ!」


「お前が悪いんだろうが」


「お前が止めなかったのが悪い! 俺は被害者だ! 被害者は常にただしい! というわけで、今後、龍委として働いていく上で発生する面倒事は全部任せた!」


「俺に下っ端役を押し付けたかったら、まずは、タイマンを申し込んでこい。俺より弱いやつの命令を聞く気は一ミリもない」


「ふざけるなよ、ゲン! お前が、まだまだ弱かった時、必死になって世話をしてやった恩を忘れたとは言わせないぞ! そもそも、お前が、この学園に入学できたのは、完全に俺のおかげだ! その恩を今返せ! さあ、返せ!」


「お前の世話になったことは一度もない。お前のせいで、試験に落ちかけたことを、俺は今でも根に持っている。もし、この世に殺人罪という概念がなかった場合、俺は、確実にお前を殺していた」


「この恥知らず! 金魚のフン! 鬼畜! 破廉恥(はれんち)! 傍若無人! 礼儀知らず! へちゃむくれ!」


「へちゃむくれは受け入れるが、他はすべて、ブーメランだな。一度、鏡、見てこい。四天王全員分の業を背負った男が、そこにいるから」


 軽佻浮薄だけではなく、

 傲岸不遜も、自業自得も、厚顔無恥も、

 全てを背負ったパーフェクトヒューマン、

 それが、一人四天王ボーレ。


「ハゲブタ! 刑務所生まれ!」


「……さっきも言ったが、俺はまだハゲてないし、結構な細マッチョだ。この年で、これだけのイカついボディをしているガキはめったにいないぞ……つぅか、最後のひどいな。その一言だけで、お前の人間性がうかがえるってもんだ。もし、同じ学校じゃなかったら、絶対に近づかんレベル」


「あー、もー、マジかよ! なんで、俺がこんな目に!」


「教えてやるよ。日頃の行いが悪いから」


 と、綺麗に締まったところで、


 扉がガラガラっと開いて、


 資料の束を抱えたオールバックの教員が入ってきた。


 そのオールバックは、資料を机の上に置くと、


「あ、じゃあ、これの処理、お願いします。というか、こっちの方は、全面的に任せます。私は、明日の鬼試の準備で、手が離せないので。じゃ、よろしくです」


 とだけ言い残して、

 そのまま、教室を出ていった。


 その背中を見送りながら、

 ゲンが、ため息交じりに、


「おいおい、丸投げかよ」


 と、つぶやいたと同時、

 ロコが、資料を手に取りつつ、


「そっちの方が、ごちゃごちゃ指示されるよりマシだわ」


 そう言いながら、資料に目を通していく。


 続けて、他のメンバーも、全員、

 資料に目を通していく、

 ――すると、

 途中で、ボーレ、


「え、マジで言ってんの? バカなの、この学校……」


 と、渋い顔で、声を漏らした。


 ゲンも、それには同意と言った顔で、


「……『ゴキのアジトから金目のものを盗んでくる試験』か……ずいぶんと、ファンキーな試験だな……」


「ファンキーですむかよ。ふざけんなよ。誰がこんな試験やるんだよ」


「受けるやつがいるかどうかはともかく、一度、龍委のメンバーにロケハンをやらせるって書いてあるな……」


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