37話 龍委のおしごとっ!

 37話 龍委のおしごとっ!


「……りゅ、龍試委員会に……入れてください」


「あらあら、『龍試委員会』なんていう『面倒な仕事』は、あなたの大嫌いな『雑用』の最たるものなのに、自ら、その面倒を背負おうとするだなんて、珍しいこともあったものねぇ」


 別に、ルルは、ゲンについて『詳しい』わけではないが、

 しかし、

 ――『たった一年で、とんでもない成長を果たしてみせた、たぐい稀な資質を持つ、姪(めい)の剣』について、


 『何も知らない』というわけでもない。


 少なくとも、『入学試験の試験官を、【時間の無駄だから】というそれだけの理由だけで、ガチンコの全力で嫌がった』という経緯は知っている。


 ゆえに、


「明日あたり、雹でも降るんじゃないかしら」


 などと、からかってくるルルの言葉に、

 ゲンは、


「……」


 無言で、軽くにらむだけにとどめる。


 そんな、ゲンの睨みを軽く受け流してから、

 ルルは、真剣な表情で、




「――さっそく、明日から、『龍委』として働きなさい」




 と、強い口調で命令すると、

 続けて、アモンとIR3に視線を向けて、


「あなたたちもよ。あなたたち二人の入学準備は、こっちで全部やっておいてあげるから、明日から、さっそく、龍委として働いてちょうだい」






 ★






 ――翌日の朝、

 ルルの命令に従い、第五校舎に向かったゲン。


 エントランスを抜けて、

 一階の奥にある会議室に足を運ぶと、

 そこでは、すでに、

 『ゲン以外の全員』が集まっていた。


 ロコ、アモン、IR3という、昨日のメンツと、

 『雑用の雑用』としてロコに連れてこられたボーレと、

 基本的にはゲンとセットのヤマト。


 この計6人が、龍試委員会のメンバー。


「……おい、ゲン。これは、どういう状況だ? 俺は、どうして、ここに連れてこられたんだ?」


 席につくと同時、

 隣に座っているボーレが、

 そんなことを尋ねてきた。


「は? 逆に、どういうこと? むしろ、お前はなんで、ここにいるんだ?」


 ゲンが『質問の意図からして不明だ』と態度で示すと、

 ボーレは、少し丁寧に、

 『自分の置かれた状況』について語りだす。


「あ、ありのまま、今日、俺の身におこったことを話すぜ。今朝、廊下でロコ様とすれ違った時に、軽く挨拶したら、首根っこ掴まれて……気づいたら、ここに座っていた。何を言っているのかわからないと思うが、俺も自分の状況が一ミリも理解できてねぇ……」


 この世界に存在する『人間(変なヤツ)』が、

 『たまに、テンプレセリフを口にする』ということに、

 すっかり慣れてしまったゲンは、

 その部分に対しては、特に引っかかることなく、


「……ああ、なるほど」


 と、納得の頷きをみせる。


「理解できたのか? なら、俺に、俺の状況を教えてくれ」


「おめでとう。ボーレ、君は、栄えある龍試委員会のメンバーに抜擢された」


「なん……だと……」


 驚愕の表情を浮かべるボーレ。

 ワナワナと震えながら、


「あの、『キツい、しんどい、メンドくさい、ふざけんな』でおなじみの龍委に……こ、この俺が……」


「この中で最弱である君のミッションは、いわば、『パシリのパシリ』だ。せいぜい、頑張って働いてくれたまえ」


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