29話 成熟した世界しか知らない若者。

 29話 成熟した世界しか知らない若者。


(……『結構な実力者』がそれなりにいて、かつ、コスモゾーン・レリックとかいう、存在値を大幅に引き上げることが可能な『ふざけたアイテム』もたくさんある世界。……『天下だけで完全制覇する』のは、かなり難しいと思う……流石に『三至や五聖』が出る必要はないと思うけれど、場合によっては、結構な数の九華が出動する必要があるかも)



(……正直、そんな世界が存在するなんて、夢にも思っていなかったわ)



 IR3とアモンは、どちらも非常に若い。

 『成熟した第2~第9アルファ』しか知らない若者。


 第2~第9アルファは、実質、最高位の世界であり、

 その全てを牛耳っているゼノリカは、

 どの世界においても、

 『ありえないレベルの最強である』、

 とIR3とアモンは思っていた。


 ※ 世界の広さを、完全に把握しているわけではなくとも、

   アルファが最高位であり、

   そのアルファの中でも、自分たちが住む、

   第2~第9が最上位である、

   ということは、なんとなく理解できている。


 ――実際のところ、

 『原初の世界』を攻略するのは楽勝だった。

 『エックス級』が相手だと、楽連の武士が3人も出動すれば、

 世界を掌握することも可能だった。


 『ゆっくり浸透していく』という手段を選んだため、

 攻略速度は遅かったが、

 その気になれば、あの程度の世界は、数日で完全に支配できた。


 P型とかいう、わけのわからない存在にかき乱されはしたが、

 しかし、『強大な力を持ったP型』だって、

 結局のところは、神帝陛下に、ほとんど瞬殺された。


 標的が『エックス級』の場合、

 『世界全て丸々』が相手だろうと、

 『ゼノリカ』ならば、『精鋭』を数人も出せば、

 余裕で攻略できる。


 ――それが、『ゼノリカに属する者』の基本的な視点。

 それは、通常においては、事実であり、

 実際、ゼノリカが、

 『第2~第9アルファ以外』の『アルファ』を、

 『攻略しよう』とした場合、

 たいていは、天下の中から、

 『テキトーに50人ほど出動させるだけ』でも、

 10日~3か月以内の間に、

 間違いなく、世界征服することが可能。



 ――だが、この真・第一アルファは違う。

 少なくとも、九華の出動が絶対条件。



(別に、テキトーな行動をするつもりはなかったけれど、今後は、より慎重に行動する必要があると、僕は思う)


(同意するわ。慎重に情報を奪取していく必要がある。この世界は、ナメてかかったら、ゼノリカが、痛手をくらう可能性がある)


(ま、仮に、痛手を受けたとしても、かすり傷程度が精々だと思うけれどね。……で? ここからどうする? どうやって、この試験を終わらせる?)


(普通に勝てばいいと思うわ)


(そうしたら、ロコとゲンが退学になるけど? この二人の調査と監視は必須事項。放置はありえない。学園から離れられたら、調査も監視も、非常に面倒になる。それは出来れば勘弁してほしい。この程度のミッションで、増援を要請するのはイヤだ)


 『増援を要請する』というのは、

 『自分たちの力不足』を宣言するのに等しい。


 『迷わず増援を要請した場合』の方が、

 『評価が上がる』というケースもあるが、

 今回の場合だと、

 『評価が下がるだろう』とアモンは推測する。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る