23話 ああいえばこういう。
23話 ああいえばこういう。
「機動魔法は? まだつかえる?」
「使おうとしたところで、デバフをくらって動けなくなりました。あのガキ、戦闘力が高いだけじゃなく、凶悪なデバフも撒(ま)いてきます。後ろの女の実力は不明です」
「……ふぅん」
と、言いながら、
ロコは、アイテムボックスに手を突っ込んで、
「これ、飲みなさい」
と、セイ〇ガンそっくりな丸薬を差し出してきた。
「色がヤバいんですけど、これ、大丈夫ですか?」
「大丈夫か、大丈夫でないかで言えば、さほど大丈夫ではないわね」
「えぇ……」
「これは、状態異常の耐性を上げてくれる薬。あたしが、それなりに魔力を込めたものだから、効果は抜群。ただ、副作用として、2週間ほど、『首肩の重ダルさ』と『便秘』に悩まされるわ」
「……」
「退学するよりマシでしょ?」
「……いや、まあ……はい」
しぶしぶといった感じでそう言いつつ、
ゲンは、『ロコの薬』を飲み込んだ。
「……なんか、気分が悪いんですけど、ロコ様……」
「それは、ただのプラシーボね。悪心の副作用は確認されていないから。あの薬のデメリットは、単発的な頚腕(けいわん)症候群と過敏性腸症候群になるだけ」
と、そこで、
ルルが、
「それでは、そろそろ試験をはじめましょうか」
と言いつつ、
受験生二人に視線を向けて、
「最初に、ルールを明確にしておくわ。ロコとゲンに勝ったら合格。負けたら、不合格。ロコとゲンは負けたら退学。以上よ。何か質問があるなら、受け付けるけど?」
そう言われて、IR3が、
アモンを指さしながら、
「……彼は、先ほど、試験官ゲン・フォースとのタイマンに勝利したわけですが、その事実はなかったことになっているのですか?」
という質問に対し、
ルルは、
「タイマンで勝っていたのなら、もちろん、合格を認めていたわ。けれど……ねぇ?」
「……」
意味深な沈黙が流れた。
その流れの中で、
アモンが、通信の魔法を使い、
(だから言ったんだ。なにが『バレるようなヘマはしない』だ。おもいっきりバレているじゃないか。余計なことしやがって……ほんと、もう……)
怒りをあらわにするアモンに、
IR3は、シレっと、
(試験官であるゲン・フォースにはバレないと言っただけ。そして、実際、バレてはいなかった。私は、なにも『この世の誰にもバレない』とは言っていない。九華クラスのバケモノの目も欺けるとは一言も言っていない)
(あのオバサンが監視していたのは知っていただろうが)
(全宮ルルのことは、事前調査で、少しだけ把握している。彼女が試験に介入してきたことは、一度もない。彼女は『任せる』と決めたら『徹底して監督者のポジションを貫く』という『ルールを順守するタイプ』の人間。というわけで、現状は、完全にイレギュラー。ただ、このイレギュラーは、決して不運なものではない。入学後に決行する予定だった全宮ルルとの接触が、思ったよりもはやく叶ったという幸運ととらえるべき)
(ああいえばこういう……)
(ノシをつけて返すわ)
などと、言い争っている間に、
ルルが、
「どうやら、納得してもらえたようだし……それでは、試験開始といきましょうか」
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