20話 試験内容の変更。

 20話 試験内容の変更。


「ちなみに、あなたは? どういう出自?」


「私も捨て子です。エリアDのはずれにある川に捨てられました。物好きなおばあさんに拾われたので、どうにか、一命をとりとめ、今日まで生き延びることが出来ました」


「ふふ……そう。大変だったわね」


 と、1ミリも信じていない笑顔で、そう言ってから、




「なんだか、最近、各地で、『妙な出来事』が頻発しているようだけれど……あなたたちは、その関係者ってところ?」




「「なにを言っているのか、さっぱりわかりかねます」」


 かぶせるように即答したアモンとIR3に対し、

 ルルは、少しだけ鋭い目になって、


「その『拙(つたな)さ』は、私を、ナメているから? それとも、『引き込もう』としているから?」


 その問いかけに対し、

 アモンは、


「どちらだと思います?」


 などと、

 そんなふざけた言葉を投げかけた。


 ルルは、数秒だけ黙ったが、

 ふいに、

 ニコっと微笑んで、


「ふふ……これから先、いろいろと面白くなりそうね」


 ボソっと、そう言ってから、

 パチンと指をならした。


 すると、その場にいた全員の視界が、

 一瞬だけグルっと反転して、


 ――気づいた時には、

 何もない真っ白な空間に閉じ込められていた。


 アモンは、眼窩(がんか)の中で、眼球だけをササっとまわして、


(質の高い空間魔法だ。これをブチ破るのは骨が折れる……あのオバサン、なかなか出来がいいな)


 IR3も、ルルを観察しながら、心の中で、


(全宮ルル……現時点だと、戦闘力は、未知数。まだ底が見えないから、判断はしかねる。けれど、圧力だけなら、九華に近いものを感じる……これが5大家の人間……確かに、噂通り、そこらのカスとは格が違う)


 アモンとIR3が、

 ルルを値踏みしていると、


 ルルが、ニコっと柔らかく微笑んで、


「ここからは、私も試験官を務めさせてもらうわ」


 そう言いながら、ゲンの後ろにまわりこみ、


「それに伴い、試験内容を少し変更させてもらう。とはいえ、ルールはさほど変わらない。条件はほとんど同じで、2対2になるだけ」


 その発言を受けて、

 ゲンが、渋い顔で、


「……『俺+ルル様』VS『あの二人』の形ですか?」


「いいえ。違うわ」


「へ?」


「そんな条件にしたら、受験生が可哀そうじゃない。全宮学園の試験理念に反するわ」


「……」


「あなたのパートナーは、彼女よ」


 そう言って、指を鳴らすと、

 ゲンの鼻先、

 地上2メートル地点の次元に穴があいて、

 その穴から、


「……ぇ? わっ!」


 ゲンと同い年くらいの『小柄な美少女』が落ちてきた。


 突然の出来事に、ビックリした顔をしていたものの、

 猫のような柔軟さで、体勢を戻して、

 地面にスタっと着地する。


「……ぇ、ぇ……なに……」


 困惑しつつも、周囲を確認し、

 ゲンとルルの顔を見つけると、


「……なんで……」


 二人の顔を見つけたことで、

 ある程度、どういう状況かは察したものの、


 さすがに、完全理解は叶わず、

 だから、小柄な美少女――『全宮ロコ』は、

 ゲンに視線を固定し、



「なんで、あたしが試験に参加しないといけないの?」


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