15話 お前は誰だ。

 15話 お前は誰だ。


(今回のミッションは、『ゲンの討伐』ではなく、『学園への潜入捜査』……無意味に『僕の全力』という情報を与える必要はない……)


 もちろん、『Sクラス』に潜入する以上、

 ある程度の実力は見せておく必要があるが、

 『必要以上の力』を見せびらかすのは愚の骨頂。


(さて、どうしたものか……)


 などと、困惑している間、


 ゲンは、


「ゲンナイト3、召喚」


 続けざまに、

 ゲンナイトを召喚し、


 さらに、召喚したゲンナイト同士で、

 バフをかけ合うように命令する。


「4枚目のゲンナイトは、あまりに強すぎて、一瞬で決着がついてしまうだろうから、ここでは使わずにおいてやるよ。俺の慈悲に感謝しろ」


 などと、ナメたことを言われて、

 アモンは、


(どうやら、4体目はいないっぽいな……)


 普通に『ハッタリだ』と見抜いたものの、


(……あのモンスターの倒し方がわからないって点は変わらない……物理に対する耐性が高いというだけなら、そこまで脅威でもないが……)


 色々な思案が頭の中をめぐる。

 当然だが、アモンは『ゲンナイトが無敵』だとは思っていない。


 『強力なバリアで一発だけ耐えた』

 『低確率で発動するスペシャルか何かで、無効化された』

 『特定の手順で攻撃しないと通らない』


 など、色々、理由や対処法は頭に浮かぶが、

 瞬時に、決定的な結論を出すことは難しい。


 そんな中、


 ゲンは、


「さあ、楽しい殺戮の時間だ」


 黒い笑顔でそう言って、

 ゲンナイトたちに、


「八方から撃ちまくれぇええ!」



「「「異次元砲」」」



 ゲンナイトたちが一斉に異次元砲を放ち、

 アモンに、回避を強制させる。


「ちっ」


 三方向からの異次元砲を回避するくらい、

 アモンならば造作もないが、

 しかし、


「――ゲン・ワンダフォ」


 回避した先で待っていたゲンの拳を避けるのは、

 楽勝とはいかず、

 つい、



「っっ――豪魔拳ランク17!!」



 反射的に、

 魔法で対応してしまった。


 ゲンの『グリムアーツ(拳)』と、

 アモンの『魔法(拳)』がぶつかり合い、

 互いに、バンッッと吹っ飛ぶ。


 両者、すぐに体勢を立て直して、

 相手の次手をうかがう。


 そんな中で、

 アモンは、歯ぎしりをして、


(く、くそ……つい、魔法を使ってしまった……)


 内偵のミッション中だから、

 『自分の全力』という情報を与えないように立ち回るべき。

 ――というのが、本気を隠していた最大の理由だが、



 『ゲンを倒すくらい、魔法なしでも余裕。

  こんなガキ相手に本気を出すのは、

  ゼノリカの天下として恥ずかしい』


 ――と、ナメたことを考えていたのも事実だった。


 実際、ゲン単体と殴り合うだけなら、

 本気を出す必要はなかったが、


 しかし、

 『ゲン&ゲンナイト』の、

 『それなりに息のあった連携』の前では、


 『実力を完全に隠した状態でも、鼻歌交じりの余裕』、

 ――というワケにはいかなかった。



(みっともない……こんなガキ相手に……たかが、ちょっと小マシな召喚獣を使われたくらいで……)



 自分に対する怒りがこみあげてきた。


(ふざけるなよ……マジで……)


 純度の高い怒りに包まれる。

 心がグツグツと沸き立つ。

 



(……僕は誰だ……)




 自問自答。

 全力で、自分自身に問いかける。


(……お前は誰だ……)


 その問いかけに、

 アモンの心臓は、ドクンと強く脈打って答える。


(そうだ……僕は……)


 栄えあるゼノリカの天下、

 楽連の武士、督脈の十五番。


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