4話 試験開始。
4話 試験開始。
「もし、君が『試験の途中』でリタイアした場合――絶命もそうだけれど、たとえば、失神・気絶なんかで戦闘不能状態に陥った場合、試験はどうなるのかな? もう一度言うけれど『僕らごときが相手だと気絶も失神もしないから大丈夫』なんて答えは求めていないからね」
子供とは思えないほど理知的で堂々とした態度。
彼の『にじみ出るエリート感』に、軽く気圧されるゲン。
――ゲンは、『彼』のことを、ジックリと観察しつつ、
「その場合、試験は最初からやり直し。俺は責任をとって退学。みたいな感じかな」
と、素直に、質問に答える。
そんなゲンの回答を受けて、
アモンは、『さっきの苦笑』とは『質の違う苦笑い』を浮かべ、
「……なんで、君は、そんな『ハイリスクな状況』に追い込まれているのかな? 『何百人という数を一人で相手しなければならず、それなのに、気絶したら退学』……その条件は、あまりに厳しすぎると思うのだけれど?」
「それは四つ目の質問だな……けど、まあいいや。それだけ答えてやるよ」
そう前を置いてから、
ゴホンと、セキを一つはさんで、
「前提1、『本来なら今年の試験は、非常に時間のかかるタルい試験』になる予定だった。前提2、毎年、Sクラスから、学生が何人か試験官として駆り出されるんだけど、今年は、それが俺の役目になってしまった。前提3、俺は『自分の時間を減らされるのが死ぬほど嫌い系男子』だから、当然のように『試験官なんか、やりたくないよ! いやだい、いやだい!』と駄々をこねたら……」
『ならば、あなたの実力次第で試験時間が短くなるシステムにしましょうか。あなたのワガママを聞いて試験内容を変更したのだから、もし、試験がスムーズにいかなかった時の責任はあなたにとってもらうけれど、いいわね?』
「というわけで、今にいたる。ご理解OK?」
「君という少年が、なかなか『尖った変人』だということはよくわかった」
やれやれと言った顔でそうつぶやく『十歳くらいのガキ』。
――ちなみに、ゲンは、現状のシステムになったことを幸運だと思っている。
時間を無駄にするだけのタルい試験よりも、
こういうわかりやすい試験の方が自分には向いている、
と本気で思っている。
「この試験方式は、俺の性(しょう)に合っている。受験生数百人を叩きのめす程度だったら、20分~30分もあれば余裕。――というわけで、さっそくはじめよう。本当なら、一度に全員を相手にしてやりたいところなんだが、上から『一人一人、ちゃんと確認しろ』って言われてしまっている。というわけで、さあ、一人ずつかかってこい」
★
試験が始まって10分も経過したころには、
「はい、不合格。次。――おら、もたもたするな。さっさと次のやつ、かかってこい!」
60人の受験生がゲンの試験を受け、
60人が不合格になっていた。
ゲンは、試験開始以降、ずっと、一定のペースで、
受験生たちを、『ちぎっては投げ、ちぎっては投げ』……
「はい、不合格。次。――もう、さっさとこいって! テンポがわるい! 俺は、このダルい作業をさっさと終わらせたいんだ!」
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