2話 デモンストレーション。

 2話 デモンストレーション。


「ガタイだけのカスが粋がるな。俺がその気になったら、お前なんざ、仮に100万人単位で分裂したとしても、7秒以内に全員、殺(や)れる」


「……くく……そこまで豪快に粋がれるのは、ある意味ですごいな」


 そう言いながら、

 その、屈強な男は、

 一歩前に出て、


「勝てば合格としか聞いていない。そして、事前に『殺してしまった場合』についての質問は投げかけた。お前を殺してしまっても、こちらに落ち度はない。質問を受け付けると言っていながら、質問に答えなかった方が悪い。というわけで……試験開始と同時、俺は、お前を殺す」


「すごい理論だな。前提と結論の相互関係性が、驚くほど希薄」


 軽く呆れてから、


「まあ、でも、そういう事をほざくバカもいるだろうと、想定はしていたから、別に驚きはしないけどな。思考回路がバグったバカはどこにでも沸くもんさ」


 そう言いつつ、

 ゲンは、粛々と、


「ちなみに言っておくと、戦闘方式はタイマンで、『戦う順番』は俺が決める。これはルールだ」


「ほう。で? 誰と最初にやる?」


「まだ質問が二つ残っている。それを受け付けてから、試験を開始……する予定だったが、いったん、お前と戦ってからの方が、くだらない質問が減りそうだから、特別に、デモンストレーションとして、最初にお前とやってやる」


 そう言って、

 ゲンは一歩前に出る。


 そして、首をパキパキっと鳴らしてから、


「さ、かかってこい。肉ダルマ。転がしてやる」


 クイクイっと、手招きをするゲン。

 そんなふざけた態度に対し、


 その『屈強な男』は、

 自身のコメカミに、

 濃い目の『怒りマーク』を浮かべて、



「クソガキ。誰を怒らせたのか、教えてやる。俺は――」



 と、名乗りをあげようとした、

 その瞬間、


「ぶべっ」


 ゲンの『有無を言わさぬ飛び膝蹴り』が、

 『屈強な男』のアゴにクリティカルヒット。


 脳天が爆揺れ。

 強烈な眩暈に襲われる。


「今のヒザは、受験生の分際で、試験官である俺に対してナメた口をきいたぶん」


 そう言いながら、

 続けて、ゲンは、


 『屈強な男』の額に、

 気合の入ったヘッドバッドをかまし、


「ぼほっ」


「今の頭突きは、俺のことを『出来の悪そうなガキ』と侮蔑したぶん」


 続けて、ゲンは、

 拳にオーラと魔力を積んで、



「そして、これが! ヤ〇チャのぶんだ!」



 叫んでから、



「――ゲン・ワンダフォ――」



 強烈な正拳突きをお見舞いした。




「ぶっはぁあああああっっ!!」




 白目をむいて、豪快に吐血しつつ、

 バタリと倒れこんだ、『屈強な男』。


 その様子を余すことなく見届けた受験生たちの何人かが、


「……ヤム〇ャ?」


 と、当然の疑問を口にしたので、

 ゲンは、

 ニっと微笑んで、


「気にするな、単なるテンプレだ」


 そう言いながら、

 ゲンは、

 『無様に倒れている屈強な男』の首根っこを掴んで、


「はい、お前、不合格」


 そう言い捨てつつ、

 邪魔にならない位置まで、

 ブンッッ、

 と、豪快に放り投げた。


 ボロ雑巾のように扱われた屈強な男を尻目に、

 ゲンは、受験生たちに、


「さあ、まだ、あと二つ質問できるぞ。なんでも聞いてくれ」


 ニコっと優しく微笑みかけながらそう言った。


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